エピローグ
エピローグ
——彼の話はどうだったであろうか。
君たちにとってはきっと突拍子もない話だろう。場合によっては脈絡もないとか、訳の分からないこと、情報が足りないということもあるかもしれない。だがそれが正しいのだ。だって彼にとって見える部分はその程度で、たった一人の人間が見える範囲なんて少ないわけだ。彼はこれから先も右腕をどうにかするために、やるべきことがあるのだろう。
とっておきの話はまだまだ他にはある。だが今回は彼の話でこれでおしまいだ。勇者をした彼の話も、占い師の彼女の話も、弓道部の彼女も、彼の妹も、まったく別々の視点を持っているとも。同じことであっても、まったく違うように——
**
——ーい、部長、何してるんだー?」
「あぁ、アギ君か、すまない、少しばかり記録をとっていてね」
「何の記録だよ」
「いざ、という時のために残しておくものだよ。気にしなくていい」
「そうか、じゃあ皆が待ってるから、先行くぞー」
「先に行っておいてくれたまえ。あぁ、そうそう」
「なんだ?」
「君はタトゥーを入れる趣味なんてあったのかい?」
「ねぇよ!」
包帯の隙間から見える彼の腕を見ながら声をかけたら、やはりというべき反応をしてくれた。彼が出て行くのを見守ってから、もう一度ボイスレコーダーを起動……しっぱなしであった。そのまま声を吹き込んでいく。
「そう、まったく違うように見えるだろう。この記録を誰かが見ているときはきっとそれが必要な事態が迫っているかもしれない。あるいは直接渡されたという可能性もあるかもしれない。この記録をたどれば、きっと仲間と出会えるのだろう。だけど、その時にはきっと私は、いないだろう。——これはいざという時のためで記録だ。君の行く先に、希望があることを、祈っているよ——
超サバイバル研究部:拝み屋と見える人 守谷ユイ @Yukina
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