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概要
捨てられなかったのは、恋ではなく、海のかけらだった。
三十五歳の瀬川奈緒は、ある夜、帰宅してアクセサリーを外していた。
ピアス、指輪、ネックレス。
いつものように小さなトレーへ置こうとした指先が、淡い青緑色のビーチグラスに触れる。
それは昔、藤崎航と海辺のレストラン Paper Moon で食事をした帰り道、彼から手渡されたものだった。
「宝石じゃないけど、綺麗ですよね」
その時は、何気ない一言だった。
けれど奈緒は、その小さな海のかけらを、何年も捨てられずにいた。
嫌いになったわけでも、喧嘩したわけでもない。
ただ、仕事、生活、タイミング、距離の中で、ふたりは少しずつ離れていった。
最後のメッセージが、最後だと気づかないまま終わることがある。
大事だったものが、音もなく手から離れていくことがある。
これは、終わった恋に戻る話では
ピアス、指輪、ネックレス。
いつものように小さなトレーへ置こうとした指先が、淡い青緑色のビーチグラスに触れる。
それは昔、藤崎航と海辺のレストラン Paper Moon で食事をした帰り道、彼から手渡されたものだった。
「宝石じゃないけど、綺麗ですよね」
その時は、何気ない一言だった。
けれど奈緒は、その小さな海のかけらを、何年も捨てられずにいた。
嫌いになったわけでも、喧嘩したわけでもない。
ただ、仕事、生活、タイミング、距離の中で、ふたりは少しずつ離れていった。
最後のメッセージが、最後だと気づかないまま終わることがある。
大事だったものが、音もなく手から離れていくことがある。
これは、終わった恋に戻る話では
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