概要
一流画廊の支店長としてエリート街道をひた走る青年テオドルス(通称テオ)には、人生最大の悩みの種があった。それは、定職にも就かず「私は偉大な画家になる!」と豪語するポンコツの兄、フィンセント・ファン・ゴッホの存在である。
ある日、極彩色の絵の具と強烈な玉ねぎの匂いを纏った兄が、テオの優雅なアパートに転がり込んでくる。高級絨毯に絵の具をぶちまけ、浮浪者を家に連れ込み、テオの給料を「至高の黄色(クローム・イエロー)」のために一瞬で溶かすフィンセント。テオの胃の粘膜と精神状態は、早くも崩壊の危機に瀕していた。
「もう絶対に小銭すら渡さない!」と激怒し、絶縁を誓うテオだったが、兄がキャンバスに叩きつける規格外の「生命の光」を見るたび、画商としての本能、そして弟としての情が
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!これは面白い。コメディなのにシリアス。ゴッホ兄弟の生涯を描いた傑作!
歴史上の偉人の伝記をコメディタッチで描く、てっぺいさんの画家シリーズ第2作です。
第1作のフェルメールは、全編これコメディでしたが、今回は、フィンセントとテオのゴッホ兄弟を題材にし、コメディタッチながら、芸術にかける情熱や狂気と言ったシリアスなテーマも内包した重層的な作品となっております。
ゴッホ兄弟の楽しい掛け合いでお話がコミカルに進みながらも、だんだんと狂気に犯されていくフィンセントの心の変遷が細やかに描写され、例の耳そぎ事件の下りは読んでいて息苦しくなるようなリアルさでした。
総じて、書き手としての地力の高さがひしひしと伝わってくる傑作だと思います。
また、有名な「ひまわり…続きを読む - ★★★ Excellent!!!兄弟思いの兄弟たちの生涯を描いた切なくも心温まるストーリーに涙が溢れる
誰もが知る有名な画家のゴッホですから、その生涯を知っている人も多くいると思います。
私もかいつまんだ概要くらいは知っていました。
ですが、この作品を読んだ時、目の前にゴッホという血の通った人間が現れ、彼を生涯に渡り支え続けた弟の姿を初めて目にした気分になりました。
前半は非常にコミカルに、弟の苦労すら笑ってしまえる内容で、読みやすさもあり、ゴッホの画家生活を読み進めることができます。
ですが、おそらく誰もが知る彼の孤独は想像を絶するものであり、最終話は涙を流しながら読み終えました。
ですが、この作品は史実とフィクションを非常に上手く融合させており、読後感は決して悲しみだけで終わりま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!二人で一人だった兄弟の話。放蕩者の画家と天分を見抜く弟
出だしは軽快に、コメディタッチで進行します。
兄フィンセントの問題行動に振り回され、金策に迫られる気の毒なテオ。
絵画の凄みを伝える描写と、巧みな人物造形に唸りました。
史実をベースにしながら、軽妙に読ませる腕の冴え。
兄弟ゲンカで軽やかに進んでゆくストーリーの奥に、もう一層が違うものが沈んでいます。
弟の負担になることを悲しむゆえに、狂気じみた明るさへ転じて見せようとする兄は、一個のピエロでありました。
そして弟は兄のしでかす行為に怒りつつ、本当は…?
ラストで立ち止まり、考えさせられました。
悲しいのに、どこか洗われたような清涼感が残ります。