歴史上の偉人の伝記をコメディタッチで描く、てっぺいさんの画家シリーズ第2作です。
第1作のフェルメールは、全編これコメディでしたが、今回は、フィンセントとテオのゴッホ兄弟を題材にし、コメディタッチながら、芸術にかける情熱や狂気と言ったシリアスなテーマも内包した重層的な作品となっております。
ゴッホ兄弟の楽しい掛け合いでお話がコミカルに進みながらも、だんだんと狂気に犯されていくフィンセントの心の変遷が細やかに描写され、例の耳そぎ事件の下りは読んでいて息苦しくなるようなリアルさでした。
総じて、書き手としての地力の高さがひしひしと伝わってくる傑作だと思います。
また、有名な「ひまわり」だけではなく、「星月夜」や、「ガシェ医師の肖像」などの名作の解説も加えられる親切設計。読み進める中でネット検索して美術鑑賞も楽しめます。
二人の不幸な結末に疲弊したところで、最後はオマケでifものが。生涯一枚しか絵が売れなかった、フィンセントとテオの兄弟が、現代のオークション会場に転生、58億円の値付けにぶったまげるというストーリーで笑わせてくれます。
いろいろと大充実の本作。
とてもお勧めです!
誰もが知る有名な画家のゴッホですから、その生涯を知っている人も多くいると思います。
私もかいつまんだ概要くらいは知っていました。
ですが、この作品を読んだ時、目の前にゴッホという血の通った人間が現れ、彼を生涯に渡り支え続けた弟の姿を初めて目にした気分になりました。
前半は非常にコミカルに、弟の苦労すら笑ってしまえる内容で、読みやすさもあり、ゴッホの画家生活を読み進めることができます。
ですが、おそらく誰もが知る彼の孤独は想像を絶するものであり、最終話は涙を流しながら読み終えました。
ですが、この作品は史実とフィクションを非常に上手く融合させており、読後感は決して悲しみだけで終わりません。
兄弟愛に溢れたこの作品をぜひ一度、読んでみてください。
ゴッホの描いた作品を見る目が変わると思いますし、この作品のおかげで報われた気持ちにもなれるでしょう。
万人におすすめしたい作品です。
出だしは軽快に、コメディタッチで進行します。
兄フィンセントの問題行動に振り回され、金策に迫られる気の毒なテオ。
絵画の凄みを伝える描写と、巧みな人物造形に唸りました。
史実をベースにしながら、軽妙に読ませる腕の冴え。
兄弟ゲンカで軽やかに進んでゆくストーリーの奥に、もう一層が違うものが沈んでいます。
弟の負担になることを悲しむゆえに、狂気じみた明るさへ転じて見せようとする兄は、一個のピエロでありました。
そして弟は兄のしでかす行為に怒りつつ、本当は…?
ラストで立ち止まり、考えさせられました。
悲しいのに、どこか洗われたような清涼感が残ります。
もともと私は美術が好きで、若い頃に観たゴッホの映画の記憶もあり、興味深く拝見させていただきました。
実際に読んでみると、ただ「画家ゴッホをなぞる話」ではなく、ポンコツで厄介で、それでもどうしようもなく眩しいフィンセントと、不憫すぎるエリート弟テオの物語として、生き生きと立ち上がっていきます。
コミカルで勢いがあるのに、根っこのところではちゃんとゴッホの絵や人生の切実さが流れていて、笑っていたはずなのに時々ハッとさせられたりもします。
芸術への執着、弟との関係、報われなさ、全部いいです。
あとがきの史実解説もすごく楽しくて、本編で笑ったあとに「それ、かなり本当なんだ……」と二重に笑えます。
個人的には、IFのおまけエピソードが好きです。
生前には報われなかった兄弟が、後世で自分たちの絵のとんでもない価値を知って大騒ぎするあの温度感が、本当に最高で、ちょっと切ないですね。
美術が好きな人はもちろん、そこまで詳しくない人でも楽しめる作品だと思います。
読み終わるころにはきっと、ゴッホの絵をもう一度見たくなりますよ!!