022 ある意味セフレな俺たちは、ロマンティックに溺れている
思いがけず泊まることになったシティホテルのラウンジからは、東京タワーが綺麗に見える。
笑えるほどの素早さで嫁に行った幼馴染は、今頃どうしているのだろう。
「咲子、直樹さんと上手くいっているみたいだね。私たちは食事どうする?」
「ルームサービスが良くない? 早く二人きりになりたい」
春菜が少し嬉しそうな
こんな時に湧き上がる想いが、愛おしいという感情なのかもしれない。
ふと、窓の外を見ようとしたとき、ガラスの影に男が映る。春菜を盗み見ている。
なんとも不快な気分になった。
「――春菜……」
「えっ、ちょっと……」
強引に引き寄せ、唇を奪う。
春菜は抵抗するが、頭ごと抱えれば大人しくなった。
まだこちらを見ている男に一瞥をくれてやる。
男はハッとした顔をしてから、慌てて逃げ去った。
口付けを更に深めると、春菜は熱い息を漏らす。
甘い。
理屈とか、愛とか、心とかじゃない。
この女は俺の聖域なんだ。
大切にしている綺麗なものを穢されるような不愉快さ。
俺から春菜を奪う人間が、腹立たしくて仕方がない。
「光ちゃん。部屋に行こ」
「せっかく着た服を……もう、脱ぐのか?」
「光ちゃんの意地悪」
「部屋行ったら――犯すよ。いいの?」
「いい」
今日の春菜はとても素直だ。
咲子と出かけたのが気になっているのだろう。
多分、感じている。咲子になら心を動かすかもしれないと。
そうだな、春菜。
俺は咲子の前では、理性的な“良い人間”でいられる。
咲子は、男がしっかりしなくてはならない、そんな雰囲気を持っている。
余裕を持って、優しくしてやれる。
だけどな、俺の好みに染めて、美しく実らせて、もぎり取りたいのはお前だけなんだ。
俺のところまで堕として、泣かせて、奪いつくす。
俺が立ち上がると、春菜は、腰に手を回し体を預けた。
そして、潤んだ瞳を俺に向ける。
「光ちゃんなんか、きらい⋯⋯」
春菜だって俺を離さない。
どうすれば煽れるか、どうすれば俺の理性を砕けるか、本当によく知り尽くしている。
腕を掴み、腰を抱き、足早に歩く。
余裕なんてどこにもない。
しょせん、春菜の思い通りだ。
俺たちはゆっくりと溶け合い、一つになれる方法を知っている。
代わりなんかは、居るはずがない。
――朝。
目覚めると、ルームサービスの食器は綺麗に片付けられ、化粧を済ませた春菜がこちらを見ていた。
昨日のことは夢だったのかと思うような、清楚な白のニットに深緑のロングスカート。薄化粧にベージュのリップ。
「それも俺が買ってやった服だっけ?」
「そうよ。今日初めて下ろしたの」
「そんな感じも、――似合うな」
「褒めても何もでないよ!」
幸せな気分で着替えて部屋を出た。
それなのに。
思い出したくもない女が、前に立ちはだかっていた。
――高橋アイ。
俺と春菜を引き裂いた女。
多分俺は、氷のように冷たい
どんなに惨めに振舞っても
――――何の感情も湧きはしない。
だから今夜も、ロマンティック同好会【1分で読める創作小説2025】 麻生燈利@カクコンは応援のみ @to_ri-aso0928
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