心因性失声症によって声を失った音羽と、幼なじみの澪との再会から始まる物語。痛みや誤解の積み重ねを丁寧に描きながら、二人が少しずつ歩み寄っていく過程が静かに胸に響きます。
派手な展開で引き込むタイプではなく、感情の積み重ねでじっくり読ませる作品です。比喩を多用した叙情的な文章は美しい一方、心情描写がやや長く感じる場面もありましたが、それも音羽の「言葉にできない思い」を表現するための手法として機能していたと思います。
声を失うこと、それでも誰かとつながろうとすることの意味を考えさせられる、丁寧に書かれた青春小説でした。
私が尊敬する栗パン先生の、新たなる名作です。
このたび書籍化が決まったそうなので、皆さん無料で読める今読んで、また本も買いましょう。
物語は、ある日声が出なくなった少女と、複雑な家庭に生まれ絶望感を抱いている少年の出会いから始まります。
いじめや虐待、あらぬ誤解など、取り巻く環境の不幸の連鎖に負けず、二人が幸福と勇気を取り戻していく姿を描きます。
それまでの間が辛く、長いかも知れませんが、主人公たちとともにそれに耐えたあと、ラストに待ち受けるカタルシスは、他に変えられないものがあるでしょう。
出会えて良かったと思える作品です。もう一度言いますが、今のうちに、今すぐ読みましょう。
最後がとても印象深い作品でした。
短い言葉では、表しようのないくらい、たくさんの思いが詰まった作品でした。
こんなにも熱いパッションと勇気と元気をもらえる作品は、ちょっと類を見ないほどで、一話一話に込められた作者の思いが、それを体現させてくれます。
本当に深く考え抜かれて書き起こされた文章だなと、書き手として、強く感じます。一行一行が尊さと、強い意志を持っているかのような、それこそ詩のような重みを感じさせる文章で、読み手としても、気持ちを集中しながら丁寧に読み進めていかなければ、掴み取ることが出来ない、そんな印象を持ちました。
この物語を読むことで人生観が変わる、そこまでの力がこの作品にはあります。何かに悩んでいる方々、不断の努力を強いられている方々、ぜひとも、この作者の声、音を聞いてください。そんなアナタにも、きっと、小さな希望の灯がともるのではないでしょうか。
コメント失礼します。
とても優しい物語でした。
でもその優しさは、
ただ「癒される」だけの優しさじゃない。
ちゃんと痛みを知っている人が、
傷付いた誰かへ、
そっと毛布を掛けるみたいな優しさでした。
まず文章が綺麗です。
空、風、草、川。
世界そのものが、
主人公・音羽の感情に寄り添うように描かれていて、
静かなのに、ずっと胸が苦しい。
特に冒頭の、
「空は、青くて、広くて、やさしい。」
この一文だけで、
“この子は世界をちゃんと見ている”
と分かるんですよね。
だからこそ、
その後に続く「声を失った理由」が重い。
しかも、この作品は、
ただ「いじめられて可哀想」という描き方をしていない。
“期待に応えられない怖さ”
“失敗への恐怖”
“ちゃんとして見えなきゃいけない苦しさ”
そういう、
実際に心が壊れていく過程を、
かなり丁寧に描いているのが印象的でした。
特に好きだったのが、
「言葉は武器」という表現。
誰かを傷付ける言葉だけじゃなく、
期待や視線や善意ですら、
時に人を追い詰める。
その怖さが、
音羽の視点を通して凄くリアルに伝わってきました。
あと、小春ちゃんのくだりが本当に好きです。
読んでいる間、
“唯一安心して話せる相手”
みたいに見えていた存在が、
実は猫だったと分かった瞬間。
あそこで、
音羽がどれだけ孤独だったのかが一気に胸へ刺さった。
でも、この作品は暗いだけじゃない。
お母さんの不器用な愛情も、
最後に現れる少年も、
ちゃんと“光”として描かれている。
だから読んでいて、
「苦しい」で終わらず、
“この子に幸せになってほしい”
へ変わっていく。
後書きまで含めて、
作者さん自身が、
とても真剣にこのテーマへ向き合っているのが伝わりました。
心が弱った経験がある人ほど、
きっと何かを感じる作品だと思います。
静かな青春物語、
繊細な心理描写、
優しい恋愛作品が好きな人にはかなりおすすめです。
人は自分のことをどう思っているんだろうか。ある人は世界一優しい人、天才と思っているだろうし、ある人はどうしようもない奴、身勝手なクズ野郎と自嘲するだろう。それだけならまだ良い、問題なのは、その思い込みが自分を腐らせてしまうことなんだと思う。言い換えれば、自分のことを愛せなくなることなんだろうか。
本作の主人公、音羽ちゃんは声が出せない。それ故に、身勝手な偏見やいじめに晒されていた。人間の悪意が彼女を傷付け、傷付けられた自らの心が自分を傷付ける悪循環。自分を愛せなくなっていたといったところだろう。
それでも、彼女には大切な仲間がいる。野良猫の小春に、陽気なイケメンの澪。彼らの善意が、ボロボロになった音羽ちゃんの心を癒していく様が本当に素晴らしいのだ。
正直、かなり辛い話。けれど、それでこそ人の善意も輝くというものだろう。ぜひ読んでみてほしい。
エリート進学校、その内情に分け入ることは決して容易ではない。
しかし、筆者独自の経験と視点から開示された特異ないじめの実態は、静かであり過酷なものだった。
その環境において、まるで人間関係のクレバスに落ちたかのように声を失った少女・音羽ちゃんが、不思議なオーラをもつ転校生・澪くんと出逢う。偶然のような必然性。なぜなら、澪くんもまた、大変な背景を背負っているからだ。
思春期真っ只中の二人が、互いにひかれあいながら、時にそれをよすがとし、それぞれの苦しい現実を必死で乗り越えてゆく。
若い二人でありながらも、互いに依存せずに己の足でしっかりと大地を踏みしめること、その大切さを理解している。これがなによりも素晴らしい。
最後に音を取り戻し、羽ばたく音羽ちゃんの英文スピーチに、その意識の高さが読み取れます。
恐ろしい先生や親がいる反面、彼らを支える親たち、漢文の先生、カウンセラーや友人たち、サポーターたちの活躍にも胸が熱くなります。
ぜひ一度、ご覧いただきたい。リアリティと夢が交差する、素晴らしい青春小説です。
高校生の音羽は、スピーチ大会に向けて努力を重ねてきたのにも関わらず、信頼していた人に裏切られ(冷たく突き放され)、やがて心因性失声症となって声を発せなくなってしまった。
そんなある日、彼女の前に澪という名の男の子が現れる。
彼は、明るく真面目で英語が上手……すぐにクラスの人気者になるが、常に音羽を気遣うように立ち回る。
どうやら二人は、かつて出会ったことがあるようだ。
澪はその時の思いから音羽を守ろうとするのだが、彼もまた、心を追い詰められることの苦しみを、身を持って知っていたのだった――。
声を出せなくなった音羽と、生きることを制限され続けてきた澪、二人が互いを優しく支えながら自分自身を取り戻していく……二人の優しさと勇気が胸を打つ、奇跡のような物語です。
今作において二人に立ちはだかる障壁はあまりに高い。
本来、信頼すべき先生に理解されなかったり、愛すべき親に自由を縛られたら……。
社会もその解決のためにスムーズに動いてくれる……ということは難しいでしょう。
それでも、二人はいろんな人々の力を借りながら、そして反対に手を差し伸べながら、友達をつくり、自分の心と向き合い、状況を少しずつ明るい方へと運んでいきます。
そんな過程を通して、自分自身の声を持つことの大切さ、そのために支え合う勇気や優しさの重要さを教えていただきました。
是非とも、多くの方々に読んでいただきたい傑作です!!!
完結前の第58話の時点でレビューいたします。
メインは二人の高校生のまっすぐな恋――です。
それが好きな方はきっととても楽しく、ハラハラしながら読めると思います。また、そうではなくても、かつて高校生だったころに苦しんだこと、悩んだことを覚えている人は、なにか「これ、思い出す感覚だ」と思うのではないでしょうか。
高校生たちが主人公ですが、きっと大人も、高校生以前の方も、無理なく読めると思います。
また恋の話ですが、それ以上のものが書かれています。乗り越えるものを乗り越えたり、現実の辛さに手を差し伸べてくれる大人と出会ったりする要素が、ていねいに描かれています。
紅戸ベニという読者は、わりとそっちのことが気になって気になってストーリーを追い続けた気がします。
音羽と澪は、とてもお似合いなので、恋の心配はしなかった!
完結まで二話を残すのみ。
『音に、音はない。』というタイトルに込められた意味が、まだありそうな予感も、しています。
音羽に、声という音が失われていること。逆に誰かとつながるための伝達の手段に声という空気の振動は絶対に必要なわけではないということ。表裏一体の意味は、今のところあるのじゃないかなーと思っている読者なのですけれど。