静かな短歌の世界に迎えられた。「離陸した雀にうずたかくひかる都市工学の射程はどこまで」という冒頭の一首が心に響く。特に「まなうらの幽霊たちを躍らせてしんしんと降るまひるの埃」という表現には、日常の中に潜む幻想的な瞬間の美しさがある。「樹冠」というタイトルには、都市という人工環境の中でも自然への憧憬が高く伸びていく想いが込められているように感じた。私もまた、東京の街角でふと立ち止まって見上げた空の青さを思い出した。
タイトルは樹冠ということで、樹になぞらえた短歌が並んでいるのですが、決してありきたりな発想にはならないで、独自の鋭く繊細な感性を感じます。楽器たる自覚がのべつまくなしに触れられて芽生える 春疾風この歌では、楽器というものは奏者に触れられることで、自分が楽器だという自覚が芽生えると言っていて、目から鱗でした。特に素晴らしいと思った短歌1首を紹介します。あとは揚力を信じる 代弁って木製の羽のようであやうい
もっと見る