パンを焼いてただけなのにっ！？～お忍びで来た冷酷王子の胃袋を掴んだ結果、なぜか過保護に溺愛されています～

パン屋の娘アネモネは、幼い頃からの許嫁である騎士ルカとのささやかな幸せを夢見て、日々愛情を込めてパンを焼いていた。しかし、出世したルカは「パンの匂いにはうんざりだ」と冷酷に婚約を破棄。アネモネは絶望の淵に突き落とされ、大好きだったパン作りへの情熱も、自分自身への自信も失ってしまう。

心を閉ざし、工房にも立てない日々。家族の心配も、常連客の温かさも、今の彼女には届かない。そんな中、アネモネのパンを純粋に求める小さな男の子の言葉が、凍りついていた彼女の心を微かに揺り動かす。「私のパンを待っていてくれる人がいる……」。

これは、全てを失ったパン屋の少女が、パンを通じて再び立ち上がり、やがて運命の出会いを果たして本当の愛と幸せを掴むまでの、温かくて少し切ない物語の始まり。彼女が焼き上げるパンの香りは、誰の心を溶かすのだろうか――？