黄白色のメトロノーム

近年AIが急速に発達し、様々な分野で取り入れられるようになりました。
それは生活をより豊かにしてくれる一方で、創作という魂を込めて作り出すものへの意見はすごく分かれる部分なのではとも思います。

AIが作り出す文章は、勿論すごいものだと思います。私は生成AIを使ったことはないですが、自分では考えつけないような文章や語彙や言い回しを沢山持っているんだろうなぁと思う一方で、創作者魂とは、と言う面においてはとても考えさせられる部分でもあるのではないかとも思います。そういった面で、本作では娘さんとの口論の一端となってしまうのですが、それももしかしたら、そこに人の心があるからなのかもしれません。

A…続きを読む

ここ数年、分野を問わず知的産業が生成AI の影響を大きく受けているのは、皆様ご存知の通り。作家業界隈もその例外ではなく、むしろ、影響をもっとも大きく受けている分野の一つかもしれませんね。
本作は、そんな作家と生成AI との関係について、一つのアンサーを見出しているように思えます。
ネタバレを避けるためにここには詳しく内容を記しませんが、今だからこそ書ける、哲学的なテーマをもった作品です。オススメです。

　近頃カクヨム内でもいろいろと喧しい、AI作成の小説について考えさせられたお話しでした。　

　主人公で作家の健一は、自死した親友で作家仲間の嶋田の気持ちを追うために、AIのチャット「ペルソナ」で、尊敬する知人の平手政秀氏を読み込ませたうえ、嶋田のメンタリティも結合させ、嶋田の死の原因について追い始めます。

　その過程で、健一は時代の流れに柔軟に、AIをつかって小説を書くことを決意したのですが、それが文学部３年生の沙耶の反発にあり、親子間の断絶へと発展していきます。
　オール手作りの小説、ＡＩで書いた小説、その差異はどこにあるのか。癒合は可能なのか。そのメインテーマが、健一と沙耶の人間関係…続きを読む

　時代は変わった。
　AI技術は発展を遂げ、特定個人の人格模写さえできるようになった。
　シンギュラリティを越えたのだ。

　では、小説の創り方は？
　変えざるを得ないだろう。

　AIなら人間より、はるかに速く書けるのだ。
　展開を築き、心の機微を捉え……あらゆる作業をこなしてしまう。

　――――そうなったら、自分の価値とは？

　今を生きる創作者なら、一度は考えた問いのはず。
　主人公である小説家の健一も悩む。

　道具は道具。いや、これは冒涜。
　そもそも、出力結果に心は宿るのか。

　かけがえのない家族、思い出までをも巻き込んだ葛藤の行く末は――――


　希望を持たせてくれた作品。