第6話 それなら、君がやったらどうだい?

 いや~、なんか途中から愚痴みたいになってしまいましたが、昨今の農業事情を少しでも理解して欲しいから書いたわけですが、ちゃんと伝わりましたかね?


 米騒動の件で図らずも、農業に関心を持ってくれる人が増えたのは良い傾向なのですが、とにかく“机上の空論”と“現場への無理解”が多すぎるというのが、正直なところです。


 いやまあ、JAを擁護気味に書きましたが、現場もかなりイラついているのも事実ですよ。


 とにかく動きが遅く、場当たり的な対応が多すぎる。


 なので、JAから撤退する農家も増えてきているのですよ。


 出荷については、同業他社の参入によって、地元のJAも危機感を覚え始めましたからね。


 実際、総出荷量の3割が、ここ1年でJAから他社に流れちゃいました。


 今やJAは“農家にとっての唯一無二の存在”から、“数ある選択肢の一つ”にまで重要性が下がってきています。


 それでもなお多くのシェアを占めているのは、これまでの付き合いやノウハウがある事と、金融機関が一体化している強みがあるからです。


 それでも、以前に比べれば落ちぶれてはいますよ。


 まあ、自分に言わせれば、JAの自業自得なんですけどね。


 こっちがやるなって言ってることを強行して、しかも大失敗して、そのしわ寄せを現場に押し付けようとしたんですから、そりゃ離れる農家も出てきますわ。

 

 自分もそんなイラついてる農家の一人ですし。


 JA以外の業者から出荷したいのも山々なんですが、少々JAと深く関わっている部分が多くって、抜けるに抜けれないのが実情なんですよね。


 面白い仕事を回してくれている、ってのが最大の理由ですけど。


 儲けにはならんが、個人的には楽しい仕事でもある。


 料理関係の仕事で、趣味の延長として引き受けている仕事だ。


 稼ぎは副業の方じゃなくて、本職の白ねぎ農家で稼げばよいさ~、ってね。


 でも、結局、農業従事者の頭数を増やさない事には、今後の日本の農業はお先真っ暗ですよ。


 ちょいと前、白ねぎ農家の会合に出かけたんですけど、そん時の顔触れ、自分が一番年下だったんですよ。


 若者がいなぁ~い!


 てか、自分の年齢が若者に分類されている~!


 ほんと、近い将来、食べ物なくなりますぞ。


 米騒動であ~だこ~だと息巻いていたやつよ、儲けたいんだろ?


 なら、こっちに来なさいよ。


 散々農業の現場を知りもしないで批判していたんだし、是非現場を味わって欲しいもんですよ。



「それなら、君がやったらどうだい?」



 いつでも農村にいらっしゃいな。


 歓迎するよ!


 あれほど息巻いていたんだし、余裕だろ?


 そう言ってやりたいですわ。


 まあ、こっちはこっちで最善を尽くすだけです。


 熱波に負けずに、ひたすら白ねぎを愛でる。


 読者の皆さんも覚悟しておいてください。


 農業の現場は限界が近づいています。


 しかも、熱波がそれに拍車をかけています。


 本当に、米も、野菜も、食べれなくなる日が来ますよ。


 輸入米に冷凍野菜、そればかりが食卓に並ぶ日も近い。


 なので、もう一度言います。



「それなら、君がやったらどうだい?」



 高い高いという前に、高い理由を考えてみましょう。


 必要なのに、誰も作らなくなったら、そりゃ値段も上がるってもんですわ。


 生産人口の減少、物流の崩壊、都市部住人の無理解、政治家の無為無策、理由は様々ですが、日本農業の崩壊は確実に近づいています。


 今ならまだ間に合います。


 国民一人一人が今一度、“食”について意識してみましょう。


 それがなくなった時、人は死にます。


 食わずに生きていられる人間なんて、いないんですから。



「君、作る人! 僕、食べる人!」



 これがなくなります。



「君、いなくなっちゃった! 僕、食べられなくなっちゃった!」



 近い将来、こうなりますよ!


 原因究明をするのは当然にしても、理解に乏しい話をしたり顔で語り、現場を混乱させる事だけは止めましょう。


 今回の米騒動で、自分は色々と思い知らされました。


 無理解と偏見に勝る毒はなし!


 まずは冷静になって観察し、そして、考えましょう!


 自分も一農家として、出来る限りの事を現場で実践するだけです。


 今日も今日とて、あなたの食卓に白ねぎをお届けいたします!



             ~ 完 ~

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それなら、君がやったらどうだい? 夢神 蒼茫 @neginegigunsou

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