概要
雨の日にだけ現れる焙煎士の彼には、秘密があった。
22歳のアパレル販売員、紗季(さき)は、移動先の店舗の近くに雰囲気のよいロースタリーカフェを見つける。焙煎中の店内は香ばしいコーヒー豆の香りに混ざって、不思議と雨のにおいが漂っていた。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!こういう物語、人間に必要だと思う。
静かで透明な幸せを詰め込んだような、濁りのない物語。
服飾店で働く主人公があるカフェで出会った、腕の良い焙煎士の青年。彼にはちょっと不思議な秘密があるのですが——その秘密が、日常の中になんとも心地良く混ざり込み、不思議なことなど何一つないかのようにさらさらと描かれます。
二人の間に、やがて穏やかに育っていく感情。時の経過の中で、彼らの日々が温かく細やかに描かれていきます。
雨の匂いと湿度が作品に常に漂い、日々の生活に乾き疲れている読み手の感覚を潤すようです。しっとりと穏やかなこの世界から出たくない。気づけばそんな不思議な感覚に陥っている自分に気づきます。
ごちゃごちゃとした色や雑音を全て…続きを読む