【短編/1話完結】永遠に9回目【KAC20254】
茉莉多 真遊人
本編
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
いや、待て。本当に9回か?
どうして8回でも10回でもなく、俺は最初から数を数えていたかのように正確に9回だとしっかり分かったのだろうか。
まるでそう決まっていたかのように、まるでそう思わされているかのように、だ。
……しかし、そんな陰謀論めいたことを考えていても仕方がない。
一旦、数の話は後にしよう。
では、内容だ。
あの夢とは、俺の目の前で好きな女の子が亡くなる夢だ。
亡くなり方は多少の変化があるけれど、結末はいつも同じ。
俺の目の前で好きな女の子が命を失って冷めていく。
車に突如轢かれたり、知らない誰かに刺されたり、知り合いの恨みを買ったり、死に方に決まりはないけれど、確実に死ぬ。
例外らしい例外もなく、強いて言えば、好かれて終わるか嫌われて終わるかくらいの、俺にとって大きな変化であっても、世界にとって小さすぎるような変化しかない。
笑ったり、怒ったり、悲しんだり、場合によっては安心したりさえもしているような雰囲気さえもある。
ただし、そのどれであっても、俺の目の前でその命を失い、今日の夕方にはその命を無惨に散らす。
しかし、夢は夢だ。本当に起こってしまうかどうかなんてのは分かるわけもない。だからこそ、俺はいつも夢の中で救えるようで救えずに、動けるようで動き出せずに終わってしまう。
だけど、今回こそはたとえ起こらなくとも、何かが起こる前に助けようと思う。
その日の夕方。
俺は好きな女の子の抵抗を受けながらも、何かが起こってしまっては困ると思って強引に自分の部屋に連れ込んだ。
その結果、車に轢かれることなく、知らない誰かに刺されることもなく、ただし、女の子が俺の目の前で侮蔑の色をした眼差しを向けて、それでもたしかに生きていた。
女の子は俺の説明を聞いても頭がおかしい戯言と吐き捨てて罵詈雑言を並べて立てる。
俺は君のためにここまでしたのに……。
そう思い、気付けば、女の子の命はいつもの結末を辿る。
俺はこれが現実であるはずがないと狼狽えて、すべてを放り投げて眠りに落ちた。
やがて、俺はパっと目が覚めた。
何もない。そう、夢だったのだろう。
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
【短編/1話完結】永遠に9回目【KAC20254】 茉莉多 真遊人 @Mayuto_Matsurita
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます