概要
囲碁は打つ前はまっさらな無の空間。そこに如何に自分の陣地を築いていくか。他人との境界線を作り、自分の陣地を少しでも広げようと他人の石を圧迫し無理矢理に陣地を広げていこうとする。戦いを避け、足早に辺や隅に陣地を確保する戦いもあれば、中央志向で盤の中央(天元)を制し、厚みで勝負するものもいる。また、敵陣地に果敢に切り込んで行って、獲るか獲られるかの一大勝負を仕掛ける者もいる。戦い方は人それぞれだ。だが、こちらも、いずれは雌雄を
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!人生百年時代。前半戦を終えた著者から語られるのは、希望か絶望か。
『人生の感想戦』という本作は、人生という長い道のりを、将棋や囲碁の対局に見立てて綴られた自伝的エッセイです。
対局の相手として登場するのは、生まれ落ちてから、自身と同じ性を持つ者として最初に意識するであろう「父親」。大人になってからの「仕事」と「ライフワーク」。人生の転機や葛藤を象徴する相手との対局が描かれています。
なかでも印象的なのが、「父親」との一局。優秀すぎる父に対し、常に比較のなかに置かれてきた著者の視点から語られます。しかし、この対局は単なる劣等感の物語ではありません。語り口にはユーモアと含蓄があり、著者自身もまた高い知性と感受性、そして豊かな表現力を備えた人物であることが、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!カクヨムの鬼才、青山翠雲氏の半生と決意表明
カクヨムの鬼才として一部で熱烈な支持を集める、青山翠雲さんの半生を綴った自伝です。
得てして、この種作品は、「ふーん、そう」で終わってしまうのですが、翠雲さんのは、濃い! とても濃い! 人生における、悩みや葛藤、それを乗り越えたり乗り越えられなかったりして、また再生に向かうプロセスの連続に、思わず引き込まれてしまいます。
そして最後は、残りの半生を全力で生き抜き、ラオウのように悔いなく終わることを表明されています。同年輩のものとして、素直に声援を送りたい気持ちになりました。
しかし、大変濃いので、胸焼け注意! 一日一話ずつ、味わって読むのがいいんじゃないでしょうか?
これはお…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人間到る処文学あり
「じんかんいたるところぶんがくあり」
五言絶句なんぞムーンサルトしたってひねり出せない私には故事成語をもじるくらいが精いっぱいである。つまり青山翠雲氏の芸術性がバチクソ高いのに親しみやすい、エロいのに高尚な文学は、この人生経験から生み出されたのである。
特にフルシチョフを登場させるあたりが私のツボに入った。フルシチョフはスターリン批判を行った人物である。スターリンによる恐怖政治を静かにしたたかに生き抜いた男フルシチョフとケネディでなければ、人類初の核戦争勃発かと全世界を恐怖のズンドコに叩き落としたキューバ危機を阻止することは不可能だった。
さて、カクヨム初の波動砲発射で我々を震撼せしめた青山…続きを読む - ★★★ Excellent!!!父子鷹、舞う!
奇才・青山氏のこれまでの人生を将棋の感想戦になぞらえて振り返る私小説風の作品。
成績優秀だったご尊父から厳しくも愛ある薫陶を受け、幼少期よりその多彩な才能を勉学・スポーツ・将棋・音楽・ご自愛などに発揮されてきた氏の、創作の原点を垣間見た気がする。氏の気質であろうか幾分しょっぱい思い出が多めで甘酸っぱい浮いた話は微塵も出てこない。次は氏の女性遍歴を綴った「人生のピロートーク」なるタイトルも読んでみたい。いくつになっても人生には彩りも重要だ。同年代の私自身、人生の折り返し地点を過ぎてなお自分がまだこんなにご自愛することに驚いている。中学生時代とまではいかなくとも、30代中盤程度のご自愛はキープし…続きを読む - ★★ Very Good!!振り返るとき、思い浮かぶものは――
小学生のころ、「今このことが悔しい」と思ったことが何十年も心に残る。そんなふうに想像さえしなかったのに。
きっと死の間際になっても、そんな小さなキズのようなものが、私たちの人生の味だったんだと思うと思います。
思えば栄光とか成功とかって、そのときの自分が味わって、もしかしたら他人がちょっとうらやましがって、それでおしまいになることも多い気がします。でも自分一人の胸の内側にあるものは、ずっと消えない。
そんなことを、まるで自分の人生のように感じて、読みました。
すんなり勝った記録よりも、苦労した記録だからおもしろいのが、感想戦なんでしょうね。心に残った傷や、苦労のあとが、おもしろいし、印象…続きを読む