『この世は一人一人の言葉が作った織物ぞ』
とある人の格言を思い出しました。
言葉というのは不思議なもので、それを耳にした人、目にした人、のみならず発信した本人にまで影響を及ぼします。
単語や響きが心にひっつき、細菌の根が張るがごとく心身に影響を及ぼすのです。
まるで、まじないです。
私は小説をたしなみますが、短歌にはあまり触れた事がありません。にもかかわらずこちらの作品の、たった31音の制約の中で練りぬかれた10の世界には脱帽いたしました。
単語から想起される若々しい恋苦。そして、文末の響きがもたらす滋味深い余韻。
『恋』の苦しさを詠った内容とは裏腹に、私にもたらされたのは心地よい陶酔でした。
私もいつか、こんな風に言葉を織り上げてみたいものです。
みなさまもどうぞ、こちらの作品を味わわれて、恋慕の言霊が織り成すまじないにかかりませ。
切ない恋を短歌で表現し、季節を通した10首連作で見事に歌い上げてくれています。
時に溢れる語彙で複雑な感情を表現し、時にシンプルな言葉を選び実直に感情を伝える……一首一首にこだわりが感じられて、籠められた想いを満遍なく味わわせてくれる。
世に叶わぬ恋は多くとも、だからとて決して無駄ではない、それも人生の一部だと……そんなエールを贈ってくれるような、応援歌のようにも感じました。
こうした作品との出会いで、また短歌の美しさを教えてもらえる、という気がしています……読ませてもらえて、本当にありがとうございました……!