黒い髪の人魚（カクコン１１用改稿版）

読み終えたあとで、「黒い髪の人魚」というタイトルに
なるほど、と頷いてしまいました。

これは最初から、結ばれない恋の物語だったんですね。

続きが読みたい、とはとても言えない。
儚い余韻と、夜の密やかな熱を心に残す、ひと夏の忘れがたい恋物語でした。

夜のプールという舞台が、この恋のもどかしさと美しさを、
ぐっと引き立てているようでした。

汗ばむ夜気のなか、二人が追いかけるのは「最後の夏」と「言葉にならない愛」
湿度まで感じるほどリアルな描写と、どこか映画的な台詞回し。まるで時間そのものが二人を見送っているようで、「別れの美学」をここまで官能的に描けるのはもう魔法の域です！

熱帯夜、恋人と忍び込んだ学校のプール。

“４”の飛び込み台から舞い降りた黒髪の人魚と交わす、最後の口づけ。

――泡のように儚く消えていく、一夏の恋物語。

熱帯夜に愛し合う二人。国は違えど、ヒデとチュンチュンはお互いを分かり合えるかけがえのないパートナーだった。そんな二人の一夜の逢瀬の物語。

むせ返るような夏の夜の空気感に、プールサイドのカルキ臭。揺らめく水面に映る青い光が綺麗です。

情景描写が丁寧ですがどこか幻想的で、まるで二人のためだけに用意された夜のように感じられて美しいです。この文章や情景自体が、作者様の二人へのプレゼントのように思えて素敵です。

心をさらけ出せる相手がいることの幸福と、それすらも終わりがあるということを知ってて求め合う二人の官能シーンは、悲しみの裏にどこか気品があって胸を打たれました。

個人的に、FNCYという…続きを読む

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（269文字）

余情あふれる恋人たちの別れの夜。
熱帯夜の水辺のひとときを描く物語です。

もはや時間は戻らない。
別れは覆らない。
頭では分かっていても心と身体は互いを求め合います。

熱い時間と涼しげな水音とカルキの匂い。
夜光が照らす波紋の揺らめきに満ちた一瞬。
やがてかけがえのない思い出へと変わる時間。
チュンチュンとヒデ。
二人は生涯消えない恋をしたのです。

あふれ出る甘く切ない情感は、物語に接する者にもじゅうぶんに感じられることでしょう。
本作はそれほどに濃密なラブストーリーなのですから。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（376文字）

描写が上手くて、どのシーンも凄く引き込まれる作品。結構エロス的な愛が書かれているが、直接的すぎず不思議と下品すぎるという感じもなく、不思議な作品である。

おそらく、ヒデとチュンチュンの関係性にも焦点をあてながら、何気ない蒸し暑い日の出来事として描写されているシーンも多いからではないかと感じている。どうしてこの二人は身体的に繋がりを持っているのだろうか？　そんなことを考えながら読むことも出来て面白い。

そういうシーンも含みつつ、ヒデとチュンチュンの恋愛についても短いながらに濃い関係性も含まれているので、そういった恋愛が好きな方も是非読んでみていただきたいと思う。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（102文字）

お互いに別々の人生を歩むと決めた若い男女の純愛です。
官能もあるけど、真面目に書かれた純粋な恋愛の延長線上にある官能です。