【転生してモーツァルトと邂逅する短編小説】響鳴のソナタ ―科学と芸術の交響楽―（9,976字）

　音楽理論研究者・高橋響子の目の前で、モーツァルトの未完の楽譜が不思議な輝きを放った時、彼女の運命は大きく動き出す。
　目覚めた先は1781年のウィーン。
　16歳の宮廷楽師の娘として転生した響子は、現代の音響科学の知識を胸に、音楽界の革新に挑む。しかし、伝統を重んじる父との確執、保守的な音楽界との軋轢、そして若き天才モーツァルトとの出会いが、彼女の前に思いもよらぬ試練を突きつける。
　革新的な発声法、画期的な音響設計、そして魂の込もった歌声。科学と芸術の融合が、歴史に新たな音色を刻もうとしていた……。