最終話 夜明け
「クソオスがぁあああ! てめぇええ! 死ねよぉおおお!」
超人の
「クソオス」から巻き上げた金で買った、大御所芸能人が建てた豪邸に一人で住んでいた。映画のセットか? と思ってしまうような贅を尽くした佇まいだ。
その中でも特に豪華な造りの寝室で、超人である彼女がヒステリックにわめき散らしながら抵抗してくる。
しかし戦いのプロである
彼女は
もちろん彼は「彼女が何かを投げようとしている」事には気づいている。ナイフを取り出し、彼女の瞳めがけて投げた。
超人が投げる事でナイフは時速180キロ以上、プロ野球投手が投げるボールよりもはるかに速い速度で飛翔する。反応できずに左目に突き刺さった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
彼女の眼球が潰れ、血液と眼球内の体液が混ざった涙をボタボタと流すと同時に持っていたスタングレネードをポトリ、と落とす。
(結構役に立つもんだな)
彼はかすかに笑った……製作者への感謝だ。
「ううう……ううううう!!」
目という急所を狙われた
再生しないのを見るにもう「詰み」なのだろう。
「お前が犯した罪の多さと深さは、到底お前の命1つじゃ償いきれないが、特別に死刑という判決で許してくれる事を感謝するんだな」
「呪ってやる……クソオスが根絶やしになるまで、どいつもこいつも呪ってやるからな!」
彼女は吠えるが、しょせん「負け犬の遠吠え」でしかない。本日3回目となる首を折られ、ついに彼女は逝った。
自衛隊員が念のため死んだのかを確認する。結果は「確実に死んだ」と言えるものだ。
「……終わりました」
「ありがとう。お疲れ様。帰るぞ」
仕事が終わったので部隊は撤収準備に入った。
トラックに乗って所属している駐屯地に帰る途中、地平線から太陽が顔を出してきた……夜明けだ。
「おお……」
美しい光景に隊員から思わず声が漏れる。
「夜明け、か」
目下の悩みである2人の超人が死んだ今のこの国は、夜明けを迎えたと言っていいのだろう。
自分はこの美しい国を守っているんだなと日の出を見て確信したという。
【”セイギ”】の手先 あがつま ゆい @agatuma-yui
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