シケンカンベビー
大柳未来
本編
僕は分娩室の前で待たされていた。
社長が「暇だろ。運転付き合え」と言ってきたので、営業の同行で勉強させてもらえると思い運転手として送ったのがまさかの病院。
病院に入るや否や看護師に案内され、「お前は待ってろ」とだけ言い残して自分だけ分娩室に入っていきました。
社長、独身だったと思ったけどいつの間に結婚したのかな……?
待つこと十数分。社長が分娩室から出てきて、そのまま歩き続けるので慌てて着いていく。
「社長! どうなったんですか!? うまくいったんスか!?」
私は笑顔で報告する。
「喜べ、出産は無事成功した!」
「良かった~~~! 無事お子さん生まれて本当に良かったです!!」
「ん? あれは私の子ではないぞ?」
「――え?」
「私の子ではない、と言ったんだ」
「じゃ、じゃあ他人の子の出産立ち合いですか。ずいぶんと尖った性癖をお持ちで……」
「お前とんでもない変態に雇われてることになるけどいいのか?」
「良くないです」
病院を出て、止めていた車に乗り込む。会社に戻るよう指示されたのでエンジンをかけると、社長が続きを話し始めた。
「いいか。俺はとあるプロジェクトの出資者で、プロジェクトの成果物が生まれてきた赤ん坊なんだ」
「成果物が赤ちゃんって――何か良くなさそうな気配ですね」
「あの子は特別でな。生まれてから数日で知能が成人レベルまで成長する」
「げ! やっぱり……それって試験管ベビーって奴ですよね。機械で受精させて遺伝子いじってから女性に受精卵戻すような感じの……」
「良く知ってるな」
「昔SFのアニメとかで見たことあったけど、現実になったんですね……社長はその天才をゆくゆく外部顧問として受け入れたいとか考えてるんですか?」
「まさか! 知能の向上が続くのはせいぜい2年ちょっと。2歳半を過ぎると急激に知能が落ちて年齢相応になる。でかくなった後は興味ない」
「じゃあ、天才赤ちゃんを生み出すためだけに出資したんですか? 何のために?」
「お前、うちの商品は何だ?」
「――おむつです。紙おむつ」
「そう、そのおもつをレビューしてもらうんだよ。試験官としてな」
シケンカンベビー 大柳未来 @hello_w
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます