ここでしか生きられない根暗な灯台男に差す、輝かしく温かな光
- ★★★ Excellent!!!
ボーイ・ミーツ・ガール……というには、主人公は枯れかけ?
いや、どうでしょう本人は枯れていると思っていそうですが……
孤島の灯台守の男は、淡々と業務をこなして10年。
ある日、一艘の救命いかだが流れついたことで物語は大きく動きだします。
いかだに乗って漂着してきたのは亡命を求める隣国の上級華族の女。
さて、この2人どうなるでしょう。
私は序盤でこの主人公にグッと心を掴まれたシーンがありました。
彼は拳銃、小銃を携帯しているのですけれど、どちらにも弾を装填はしていないのです。
その理由として「急所を外して当てる技術がない」事を挙げていますが、もう一つ
>そもそも、そんな荒事は御免だったしこれで誰かを傷つけるつもりもない。仮に相手が実力に訴えるような人間だったなら、私は潔く諦めるつもりでいた。
と説明しています。
そう、そんな男なのです。
絵や物語を書くのが趣味という……そんな男なのです。
そんな彼が、うら若き亡命者の彼女とどう向き合っていくのか。
とても気になって読み進めました。
そして、最後の文字まで読み終えた時、読んで良かったとしみじみ思うお話でした。
創作の愉しさや喜び、誰かを大切に想うこと、そして誰かと共に生きることについて考えさせられる……胸を打つSFヒューマンドラマです。
ぜひ、あなたの目で2人の行く末を見届け、この物語を味わっていただきたいです。