魔法が存在する世界で、「すべてを癒す」と言われる回復魔法を持つ少年・ロンの物語です。彼の魔法には「知っているものしか治せない」という制約があります。医学と魔法の間で葛藤しながらも、努力を積み重ねる彼の姿は素敵です。
物語を彩るのは、ロンを名前で呼んでくれる数少ない友人・エリックや、個性的な酒屋の魔術師・ダニエルといった魅力的なキャラクターたち。エリックは誠実で正義感が強く、ロンを支えます。一方のダニエルは、飄々とした性格ながら肝心な場面では頼りになる大人です。彼らとの関わりが、ロンの成長をより印象的に彩ります。
文体は柔らかく、時にユーモアを交えながらも、緊迫した場面では一転して緊張感が走ります。特にロンの視点で描かれる魔法の詳細な描写はリアリティを感じさせます。
「すべてを癒す」という言葉の本当の意味を、ロンとともに見つけていく。そんな温かさに、心がじんわりと満たされる物語です。
本編を知らずに読みましたが、これだけでもとても読みがいのある作品でした。
主人公のロンは天才ヒーラーと呼ばれる小学生の男の子ですが、知っているケガや病気しか治せないという制約つき。
現実世界も医者ならなんでも治せるというわけではない、やはりそこには知識や経験が必要ですが、呪文を唱えればたちどころに~なんてご都合主義に陥らず、きっちり書ききっているあたり、作者さまの力量に本当に感心してしまいました。
しかもロンの性格が善良なんです。
体の傷や病気以外も治してくれそうな……。
心穏やかに読むことのできるこの作品、皆さまもどうかご一読を!
主人公は回復魔法を使うことができる魔法使い。
回復魔法と言えば傷口に光がまとい、あっという間に治せるもの……というイメージがあるが、今作はそういった“一般的な”回復魔法のイメージの概念を壊している。
実際に読んで、確かにと納得できる部分もあり、読み進めるのがとても楽しい。気がついたら最後まで読み進めてしまった。
話も簡潔で分かりやすく、短編の良さが発揮されているため、気軽に読める作品だ。
無知は罪、という言葉があるがそれを体現した瞬間、読者の皆様は小さく「あっ」と声を上げるだろう。
その様子もぜひ、見届けてもらいたい。
とても面白い作品でした。
ロン君は魔術師専門の小学校に通う小学二年生。
その類まれな治癒魔術と容姿と魔法を使う動作から、みんなはその子を
〝マリア様〟〝天使ちゃん〟と呼んでいます。
ある日、お祭り会場の一角、街の広場で魔法を使えない者たちによる魔術師への傷害事件が起きました。
被害に遭い、そのまま人質とされた魔術師の中には親友のエリック君もいます。
犯人たちはロン君を連れてくるように要求していました。
自らの危険を顧みずに、ロン君は広場へと向かうのですが────
優しい世界の美しい物語。
綺麗なファンタジーです。
それでいて確りとその世界魔法の機序も詳しく説明してくれています。
ロン君の持つ〝すべてを癒やす〟魔法とは、傷ついた身体だけでなく精神の差し障りさえ癒やすのではないかとさえ思ってしまいます。
それほどに彼は彼を知る周囲の人に愛されています。
とにかく善良なのです。
仲間を傷つけた者たちにさえも優しい。
もしも私がその立場ならば、そんな者たちは相応に苦しませます。
だがロン君には害意や悪意がないのです。完全に良い子です。
心穏やかに閲覧できる美しい物語です。
どうぞ、皆様もご覧くださいますように。