民俗学、日本神話、哲学……様々な領域の絡む「自分」や人間を問う硬派SF

元米国海兵隊員であるオルドは、日本に本社を持つ大手ヒューマノイド製造企業・REX社に勤めていた。彼は盗難されたプロトタイプ型ヒューマノイドロボット・ノヴァの脳器を回収するため、秘密部隊を率いて山川という男の捕縛に向かう。しかし、その先で重大な真実を突きつけられ、アイデンティティの危機に陥るのだった。

 常に興味を引く、驚きのあるストーリーに引き込まれました。まるで洋画のような雰囲気で、1話ずつの文字数に対して非常に読み応えがあります。
 序盤の衝撃的な事実により、オルドの視点で読んでいた私自身の「信じていたもの」もひっくり返され、より自分事として物語に没入できたように思います。個人的に「水槽の中の脳」を思い出しました。
 人間がヒューマノイドに職を奪われる近未来、ヒューマノイドが自我をもったら? ヒューマノイドと人間の違いとは?
 そんなSFらしい問いかけの中心には、自分とは何か?という個人単位での葛藤、そして、人間とは何か?という人類全体の課題があるように感じました。
 AIと人間を比較することによって、より人間に対する理解が深まる感覚があり、その先で物語がどんな着地を見せるのか、非常に楽しみです。
 随所から見受けられる作者様の知識の深さには驚かされると共に、知識欲をくすぐられました。また、所々に挟まれる文学的な表現にとても美しさを感じました。
 様々な領域の絡む、重厚な作品です。言葉を尽くしても、魅力すべてを正確に伝えることは難しいです。
 ぜひ、多くの方に実際に読んで、この世界観にどっぷり浸かってほしいです!

(※「第22話 スサノオの正体」までを読んでのレビューです)

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