第11話 クソボール&悪送球
◇
バナナボール開始の合図は、審判員ではなく観客によって為されるものであり、丁度昼休みの時間だから満員御礼までといかなくとも、人集りは出来上がっているので、ノリの良い誰かしら号令を待つだけだ。
『……ザザッ……ピンポンパンポーン……全校生徒の皆様にお知らせがあります。全校生徒の皆様にお知らせがあります』
おいおい、試合開始前に横槍かよ?
放送部の活動に付き合っている暇なんてない、俺たちは踊りながらバナナボールの開催を待ちわびているんだぜ?
「「「「「「カバディ! カバディ! カバディ!」」」」」」
「「「キェェェェェェエエ!!」」」「「「チェストォォォォオオ!!」」」
この通り、俺たちの背後からはカバディ部、薩摩示現流・薬丸自顕流同好会、ハカ研究会、応援団応援部による声援が送られているんだ。
よくわからない状況だけれど、声援に応えないとね?……いや、お前らの誰でもいい。
プレイボールとコールしろよ!?
『……只今より、第一グラウンドにて、バナナボール部と、チーム……えっと、俺たちの明日はわからない……による、エキシビションマッチが開催されます。特例により、バナナボール部及び、ぽっと出……失礼、チーム俺たちの明日はわからない一同の皆様は、制限時間2時間以内に試合を終わらせることを条件に、5限目の授業を免除致します。それでは全校生徒の皆様……大きな拍手とともに、プレイボール!!……ピンポンパンポーン……』
「いや、あんたらが言うんかーい!!」
ウィラの至極真っ当なツッコミに、俺たち一同は頷き、踊りながらバナナボールの試合開始だ。
一回の表、チームバナナボールのトップバッターは、左打ちの竹馬に乗った大道芸人から始まる。
名前は、大竹 左馬助(オオタケ サマノスケ)、そのまんまじゃねーか!?
彼のストライクゾーンの広さは、畳のように広く、バナナボールのルール的にストライクゾーンへ投げて打たせることが望ましい。
故に、こちらは人選を盛大にミスった。
まず、相手に打たせない為のピッチャーとして、サウスポーのウィラを登板させてしまった。
次にキャッチーは、身長144cmのクソチビポメ柴のヒナコ……うん、空振り取ったもしてもだ、この竹馬に乗った大道芸人相手に対し、全てワイルドピッチが確定した。
とりあえずどうすることも出来ないので、ヒナコは棒立ちの状態でミットを構えることに。
ウィラの投球は、野球だったら全て高めのクソボールだが、打たせて取れればいいなと祈るしかない。
1球のクソボールはファール、続く2球目のクソボールもファールと追い込んだ。
このまま空振りしてくれてもいいが、ほぼ確実に振り逃げが成立するので、打たせるしかないので3球目もクソボール。
竹馬君が空振りしたことで、クソチビポメ柴はキャッチーという名の置き物と化し、予定調和の振り逃げが成立。
懸命にボールを追ってすぐさま捕球したヒナコと、一塁に向かって駆ける、一歩一歩の歩幅が大きい竹馬君との手に汗握る展開は、これまたド近眼ヒナコのノーコンにより、一塁から逸れたかに見えたが……やっぱり一塁にナギ姐を置いて大正解だ。
クソボールからヒナコの悪送球にも関わらず、身長191cmのナギ姐は、長い手足のリーチを活かし、見事に捕球したことでワンアウト。
ああ、竹馬君が案の定というか、鈍足で助かったけれど、既に試合の行方は全く持って予想できないのであった————。
◇
運命はイタズラ心に満ち溢れている あらフォウかもんべいべ@IRIAM配信者 @around40came-on-babe
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