第11話 クソボール&悪送球







  バナナボール開始の合図は、審判員ではなく観客によって為されるものであり、丁度昼休みの時間だから満員御礼までといかなくとも、人集りは出来上がっているので、ノリの良い誰かしら号令を待つだけだ。


『……ザザッ……ピンポンパンポーン……全校生徒の皆様にお知らせがあります。全校生徒の皆様にお知らせがあります』


 おいおい、試合開始前に横槍かよ?


 放送部の活動に付き合っている暇なんてない、俺たちは踊りながらバナナボールの開催を待ちわびているんだぜ?


「「「「「「カバディ! カバディ! カバディ!」」」」」」


「「「キェェェェェェエエ!!」」」「「「チェストォォォォオオ!!」」」


 この通り、俺たちの背後からはカバディ部、薩摩示現流・薬丸自顕流同好会、ハカ研究会、応援団応援部による声援が送られているんだ。


 よくわからない状況だけれど、声援に応えないとね?……いや、お前らの誰でもいい。


 プレイボールとコールしろよ!?


『……只今より、第一グラウンドにて、バナナボール部と、チーム……えっと、俺たちの明日はわからない……による、エキシビションマッチが開催されます。特例により、バナナボール部及び、ぽっと出……失礼、チーム俺たちの明日はわからない一同の皆様は、制限時間2時間以内に試合を終わらせることを条件に、5限目の授業を免除致します。それでは全校生徒の皆様……大きな拍手とともに、プレイボール!!……ピンポンパンポーン……』


「いや、あんたらが言うんかーい!!」


 ウィラの至極真っ当なツッコミに、俺たち一同は頷き、踊りながらバナナボールの試合開始だ。



 一回の表、チームバナナボールのトップバッターは、左打ちの竹馬に乗った大道芸人から始まる。


 名前は、大竹 左馬助(オオタケ サマノスケ)、そのまんまじゃねーか!?


 彼のストライクゾーンの広さは、畳のように広く、バナナボールのルール的にストライクゾーンへ投げて打たせることが望ましい。


 故に、こちらは人選を盛大にミスった。


 まず、相手に打たせない為のピッチャーとして、サウスポーのウィラを登板させてしまった。


 次にキャッチーは、身長144cmのクソチビポメ柴のヒナコ……うん、空振り取ったもしてもだ、この竹馬に乗った大道芸人相手に対し、全てワイルドピッチが確定した。


 とりあえずどうすることも出来ないので、ヒナコは棒立ちの状態でミットを構えることに。


 ウィラの投球は、野球だったら全て高めのクソボールだが、打たせて取れればいいなと祈るしかない。


 1球のクソボールはファール、続く2球目のクソボールもファールと追い込んだ。


 このまま空振りしてくれてもいいが、ほぼ確実に振り逃げが成立するので、打たせるしかないので3球目もクソボール。


 竹馬君が空振りしたことで、クソチビポメ柴はキャッチーという名の置き物と化し、予定調和の振り逃げが成立。


 懸命にボールを追ってすぐさま捕球したヒナコと、一塁に向かって駆ける、一歩一歩の歩幅が大きい竹馬君との手に汗握る展開は、これまたド近眼ヒナコのノーコンにより、一塁から逸れたかに見えたが……やっぱり一塁にナギ姐を置いて大正解だ。


 クソボールからヒナコの悪送球にも関わらず、身長191cmのナギ姐は、長い手足のリーチを活かし、見事に捕球したことでワンアウト。


 ああ、竹馬君が案の定というか、鈍足で助かったけれど、既に試合の行方は全く持って予想できないのであった————。







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