第5話 他愛のない話
「と言うことがあったのじゃ」
コンはここまでの話を終えました。
聞かされている少女達はポケーっとしました。
「えっ、これで終わりですか!?」
少女の一人が声を上げた。
当然です。あまりにも話が中途半端に終わりました。
一体何が怖かったのか。これはホラーなのか。
コンの話を聞いていた少女は、その後が気になります。
「まさかこれで終わりじゃないですよね?」
「終わりじゃ」
「嘘ですよね!」
少女は淡々と返されたので声に出す。
それから悩んでもう一回訊ねた。
「えっと、その後どうなったんですか?」
「どうなったじゃと?」
「はい。その人、男の人はどうなったんですか?」
少女はコンに訊ねました。
するとコンは思い出すように、目を天井に向けます。
神社の社の中。細かな木目を見つめています。
「そうじゃの。確か、病院送りになったらしいの」
「病院!? ってことは今も」
「それは知らぬがな。少なくとも憑き物は取れた筈じゃ」
「ってことは生きてるってことですか!」
「当たり前じゃ。儂がつまらん人間一人の命を奪うと思うのか?」
「思いませんけど。でもよかったです、生きていて」
少女は見ず知らずの男性の命が無事でホッとしました。
コンにはその気持ちが分かりません。狐耳がピクピクと動きました。
ですが少女は不審に思います。一体何が起きていたのか、まだ核心が分かりませんでした。
「それにしても、どうしてその人は憑かれていたんですか?」
「ほぉ、分かっておったか?」
「分かりますよ。だってコンさんが憑き物って言ったじゃないですか。一体なにが憑いていたんですか?」
少女はコンに訊ねる。
するとコンは表情を顰める。
耳がピクンと動くと、少女に対して吐き掛けた。
「知らない方がいい、それが身のためじゃ」
「もしかして、私が想像しているような?」
「ん? そうかもしれんの。まあよいではないか」
コンは何処からともなくお茶を取り出す。
袖の中に腕を通しただけで
「いつも何処から取り出しているんですか?」
「なーに、儂は妖狐じゃからの。これくらい朝飯前じゃ」
コンは急須から湯呑みにお茶を注ぐ。
少女はそんな姿を見ていると、一つ気になる。
「あのコンさん、ちなみにタダで助けたんですか?」
「ん? んな訳がなかろう」
「ですよね」
コンは等価交換をする。知り合いでなければ、助ける代わりに何かを得る。
それが今回はなんだったのか。少女は気になってしまう。
「ちなみになにを取ったんですか?」
「財布」
「財布!? まさかの現金」
確かに一番謝礼で使えるものだけど、まさか妖狐がお金を盗むなんて。
世も末だと思ったが、コンの口は止まらない。
「後スマホ」
「スマホまで!?」
「ハイテクじゃろ。全部売ったがな」
「売ったんですか!?」
それは今頃男性がパニックになっているのではないだろうか?
少女は青ざめてしまうと、コンはまだまだ続けた。
「まだあるぞ。預金通帳にハンコ、クレジットカードじゃな」
「全部じゃないですか!?」
「おっと、身分証も取ったな。全部売ったが」
「売っちゃダメですよね! ってか売ったんですか!」
「冗談じゃ。儂がやったのはクレカの不正利用と残金を全額引き出したくらいじゃよ」
「犯罪ですよね、それ!」
全く冗談に聞こえなかった。
少女はツッコミを繰り広げる。
するとコンはニヤニヤ笑っていた。
「もう、コンさんって」
「じゃがの、命あっての儲け物じゃよ。このくらいいいではないか」
「うーん、確かに?」
「そうじゃよ。魔法少女なら分かるじゃろ? 無償の恩は時として仇で返される。それならば、取れるうちに取っておくじゃ」
言い返せる気がしない。と言うか言い返せない。
少女はコンの話を最後まで聞いた。
面白いと言うか、怖いって言うか、別の意味でホラーに感じた。
【短編】魔法少女は辞められない〜お狐様と憐れな男の噺〜 水定ゆう @mizusadayou
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