第6話 山川 海空 ③

現場に到着


すでに規制線とブルーシートが展開されていた

それが二か所

最低でも2人の被害者がいると考えられる


近くの警察官に状況を確認する


「お疲れ様です。状況をお聞きしても良いですか?」

「お疲れ様です。えぇ、被害者は3人。そこの大きいほうのブルーシートに2人。奥の茂みのブルーシートに1人。あそこで今聴取しているのが通報者です。」

「3人も・・・同一犯ですか?」

「まだはっきりしていませんが、時系列や手口からもおそらく関係していると思われます。」

「ありがとうございます。私たちは何をしましょうか?」

「ここは足りているので周辺捜査に加わってください。」

「了解しました。」


やり取りを終え、先輩とPCに乗り込む。


周辺地図を広げ、無線にとびこんでくる情報に照らしながら捜査する場所を確認する


「先輩、こちらの田園地帯はまだのようなのでこっちへ行きませんか?」

「そうだな。よし。」


無線で捜索予定場所を連絡し、サイレンを切ってPCを発進させた


途中、バイクに乗った警察官やPCと何度もすれ違った


「先輩・・・相当、応援で人員が入ってますね。」

「あぁ、犯人は徒歩らしいし時間の問題で逮捕にはなるだろうな。おっ、よし。ここの空き地に止めて周辺を捜索する。今は・・・3時か・・・まだ暗いので懐中電灯忘れるなよ。」


この辺りは民家もなくだだっ広い田畑の地域

隠れるところもないし、こんな時間に動いてるのは犯人か我々捜査関係者だけだと思われる


「犯人は凶器・・・おそらく刃物を所持しているので、見つけても手出しはなし。いいな?」

「はい、了解しました。」


通報者の情報により無線から今わかっている情報は

・黒ずくめ

・刃物を所持

・身長160~170cm程度で中肉中背

・40代前後の男

・徒歩で逃走?


特徴らしい特徴はないが刃物所持がわかっているだけ対応は変わってくる


慎重に辺りを窺いながらPCを中心に捜査を始めていく


30分ほどか・・・


「おい、ライトを消せ」


先輩に小声で言われ急いでライトを消す


暗がりの中、先輩が指さす方向を何とか確認しようとする

月明りがあり、徐々に明るくなりだす時間帯とはいえ、距離があるから判別は難しい


農具置き場か

辛うじて家屋に入っていく人の姿を確認できた


気配を殺し、近づいていく


家屋の裏側に到着


トタンの隙間からそっと中を窺う


暗い室内

情報にあった特徴に一致しているようにも観察される


食事中か?

何かの上に腰かけてむしゃむしゃと咀嚼する音が聞こえる


その後、食事を終えておもむろに立ち上がり、家屋内をごそごそとひっくり返す音が聞こえてきた


何かを探しているのか、いくつかの物を眺めてはカバンへ入れていた

そのうちの一つが月明りに反射してカマ状の金属が確認できた


目的があるのか男は町とは反対側の山のほうへと歩き出す


周りは隠れる場所もないので、尾行せずその後姿を見送る

男の進むその道は一本

間違いなく山側への道だけである


十分に距離が離れてから無線をとばす


ガッ

「506より本部。情報に一致する不審な人物を確認。場所は山側町の田園地帯の農具置き場周辺。"フタタビ山"方面へ徒歩にて移動中。鎌状の刃物の所持を確認。応援要請と指示願う。」

ガッ

「本部了解。506は応援PCとフタタビ山登山口周辺で合流の後、上長と情報共有し現場での指示に従え。以上。」

ガッ

「506了解。」


先輩と一緒に指示通り、PCへ戻り合流場所へと向かった


***


合流場所にはPC2台と駆け付けた警察官4名がいた


1名が3名に指示を出しているので、指示を出している見知った警部補へ声をかけ指示をもらう


「お疲れ様です。応援2名到着しました。」

「お疲れ。よし、集まったので作戦を述べる。みんな聞いてくれ。マル被の予想ルートは2つ。ここと別の登山口。」

と、地図を広げ赤丸で書かれた場所を指で示す

「また、凶器所持が確認されているため発砲許可も出ているが、あくまで牽制と威嚇を優先とする。よって銃組3名、シールド組3名の編成でいく。基本、シールドと警棒にて制圧予定なので冷静に対処してもらいたい。以上質問は?」

「「「「「なし。」」」」」

「よし。準備開始」


PCのトランクからポリカーボネートでできたライオットシールドを取り出す

「よし。俺がシールド。山川は銃で後方。いいか?」

「はい」


指示通り、銃を再度確認

たぶん訓練以外では初と思われる手持ちのM37

銃弾5発・・・よし


ちなみによく「一発目は空砲」なんてこと聞くと思うが、都市伝説である

俺はS&W M37だが何人かいるニューナンブ M60でもそこは変わらない


道側にPCをバリケード状にし、その後にライオットシールドと警棒を構えた各バディと等間隔に広がる


後方の雑木林側確認が3名、前方の道側確認が3名


そして配置は先輩と俺はちょうど真ん中


待つことしばし

空は徐々に明るくなってきた

時間は・・・5時を少し回ったとこである


不意に背後の雑木林でガサガサと音がした


振り返り見ると、特徴に一致する先程の男が雑木林から出てきた


目撃した瞬間に「あっ」とあのときの暴行されていた男性であることに気付いた


男性は我々を確認しマドウジュウ?よく分からないが何かを叫びその場に立ち尽くしていた


すかさず上長の警部補が大声で話しかける


「こちらは山川警察。凶器を手放し、投降されたし。繰り返す。こちらは山川警察。凶器を手放し、投降されたし。」


反応はない

男はじーとこちらを窺う


我々6名はじりじりと男との距離を詰めつつその動作に注視していた


やがて男は鞄から2本の包丁を取り出し構え、大きく息を吐き、左側の警部補側へと突貫してきた


えっ?

と思うのも束の間


ダァァン


と、警部補の銃が使用された音で我に返る


撃たれたことにより、それで止まるかと思われた男だが、そのままの勢いで警部補とバディを組むシールド持ちの警官に斬りかかる

初撃はシールドで防いだが、男はショルダーチャージをかまし倒れた警察官に馬乗りになり首元を切りつけだした


まずい!


と思い慌てて俺は銃を構えなおし照準を定め撃鉄を落とした


ダァァン


男の左肩に命中

男はごろっと地面に倒れ込んだ


すかさず他の警官も確保するため男に詰め寄る


が、確保寸前で男は自前の凶器で自害に至った


くっそッ!


間に合わず

深々と男の胸に突き刺さっている包丁がそれを物語っていた


それでも手錠をかけ確保する


負傷した警察官へ駆けつけるが・・・残念なことに首を刺され事切れていた


恐怖のあまり大きく見開かれた目のまま、凶悪さを象徴するように地面には赤い血だまりができていた


男との邂逅から一連の出来事があまりにも一瞬過ぎて、多分、いまだ脳の理解が追いつかずTV画面を見ているような現実味がわかないそんな心境である


隣では無線をとばし情報のやり取りをしている興奮冷めやらぬ上長の声

大丈夫か?と声を掛けてくれる先輩


しかし、何かフィルターのかかったようなそんなボーっとした状態で言われるままにその後、正午過ぎまでその場で事後処理をこなした


午後からは報告書の作成


その後、夕方に家に帰るまでこのフィルターがなくなることはなかった


こうして俺のとんでもない一日が終わりを告げた


後日の新聞やSNSの情報で知ることになったが、犯人【田中 太郎】は暴行時に脳に損傷を受け、現実を現実として認識する脳の領域を損傷していたらしい・・・


「らしい」といのも、今となってはそれは亡き犯人のみぞ知る真実・・・







☆☆☆☆☆ あとがき ☆☆☆☆☆

最後まで稚拙な本作品をお読みいただき、ありがとうございました。初投稿でどんな感じかつかむために短編の作品を掲載してみました。現在、長期の物語を執筆中です。区切りの良いとこまで書き溜めましたらまた掲載をしていきたいと考えております。励みになりますので、よろしければフォローやいいねをお願いいたします。頑張っていきたいと思ってます。改めてありがとうございました。

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【初投稿 短編 お試し】現実と空想の狭間で・・・ のりのりのん @norinorinon

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