第5話 山川 海空 ②

ど・れ・に・し・よ・か・なっと、

今日はこれにしょう!


海空は夜勤で常備している大好きなカップ麺を選び、ポッドからお湯を注いだ


まもなく3分


ガッ

「コード01(殺人)発生 現場山川総合病院 関係各所 至急対処されたし」


不意にそんな無線が飛び込んできた


ぐっ・・・急いで食べれば・・・

いや、無理か・・・


ふぅと、一つため息

食べ損ねたカップ麺を恨めしそうに一瞥

海空はマニュアルに従い、緊急連絡先の先輩へと急いで電話した


トゥルルルル・・・

ガチャ


「もしもし?」

「あ、先輩、お休み中のとこ申し訳ありません。コード01です。至急応援お願いいたします」

「01・・・わかった。すぐ向かう。山川はそのまま待機。」

「はい、了解しました。」


ガチャッと電話を切って支持通り待機する

ってもぼーっと待っとく訳じゃない

一口だけ食べたカップ麺は流しへ運び、詳細な周辺地図、必要そうな各書類の準備、手錠や銃の再点検、バリケードテープなどの道具類を準備しつつ待機する


20分ほどして一通り終わったタイミングで先輩が到着


「場所は?」

「はい、山川総合病院です」

「よし、PC(パトカー)まわせ。一番近い所轄だからサイレンならして現場に急行の後、保全と周囲の聞き込みをする。準備は?」

「はい。必要な物は準備終わりました。積み込み開始します。」

「よし。」


暗証番号を解除してキーボックスから{506PC}と書かれた鍵を取り出し裏の駐車場へ

準備しておいたものを後部座席に載せて先輩と二人、現場へ急行する


向かっている最中の車内でも無線連絡が次々と飛び込んできて、改めて事件の重大さが増していく

否が応でも緊張感は高まっていった


「01は初めてか?」

「はい。先輩は?」

「いや、俺も初めてだな。」

「ですよね。01なんて田舎の交番勤務では生涯に1度あるかないかですよね」


無線から飛び込んでくる情報を整理しつつそんな会話をしていたら現場に到着

病院の敷地に入る前にサイレンを消し誘導の警備員に従い現場近くでPCを停車する


ガッ

「506より本部。警察官2名、現着。現場保全にあたります。」

ガッ

「本部了解。直に応援PC2台到着予定。マル害は死亡確認されており応援到着後は123(人物紹介)及び周辺の聞き込みをされたし」

ガッ

「506了解。」


「よし、山川。まずは規制線の確保。次に通報者から聴取。」

「了解しました。」


バリケードテープなどの道具一式を抱えて「ここです!」という警備員の誘導する場所へ駆け足で向かう


救命処置か蘇生処置の後か・・・

周囲には医療道具も散乱しているが被害者はそのまま仰向けで倒れていた


先程、無線で死亡確認は済んでるとのことなので駆けつけた医師が宣告したのだと思われる


ロープを取り出し被害者を中心にして囲っていく

次に敷地外の通りから覗かれる場所ではないがブルーシートで大きく覆っていく

夜とあって暗い中、さらに暗くなってしまったので照明の準備も始める


「これは・・・酷いな・・・」


作業の終わりに先輩からそんなつぶやきが聞こえた


近寄りつつ海空も観察する


確かに・・・

顔や頭を激しく鈍器状の物で殴打されたのか、もはや原型がなくなるぐらい損傷が激しい


「怨恨の線ですかね?」

「どうだろなぁ。しかしこんなにも激しい殴打は何かそれに近いものがあるのかもしれないな。ま、その辺り調べるのは刑事の仕事だし犯人を逮捕すれば分かることさ。」

「あ!先輩」

「なんだ?」

「この石・・・凶器じゃないですか??」

「お、かもしれないな。写真撮影してメモしておけ。応援も着いたから次、聴取行くぞ」

「はい。」


応援に到着した別の警察官2名に引き継ぎ、そのまま通報者に話を聞く

若干、動揺していたが要点はしっかりと話をしてもらえた


・発見は19時頃

・被害者指名は"カゲイ シンゴ" 46歳 院内の調理補助業務

・ゴミ出しから帰ってこないので同僚が様子を見に来て発見

・最近恨まれていたとか何かのトラブルの有無は特筆してなし

・人物像として協調性はやや難あり

・猫好き、酒好き


「なるほど・・・ご協力、ありがとうございました。」


感謝を述べてPCに戻り、得た情報を無線でとばす


ガッ

「本部了解。506は引き続き周辺の捜査にあたれ。」


無線の指示に従い、先輩とともに逃走経路を確認する


が、それは殺害現場の外壁によじ登った血の跡があったためすぐに判明した


脚立を使い、外壁の向こう側を確認する。


真っ暗なため、懐中電灯を照らすと・・・


「ワンッワンッ!}


どうやら家の庭のようだ。

放し飼いなのか犬がライトに驚き鳴いた。


先輩と一緒に民家の玄関に回り込む


呼び鈴を鳴らすが、反応はない。

ノックをして更にしばらく待つがそれでも反応はない。


「先輩・・・留守ですかね?住所と氏名から123(人物紹介)かけます??」

「そうだな。何も・・・」


~~♪♪~~♪~


先輩が言い終える前に家内から携帯電話の着信音が聞こえた。

携帯を忘れて外出か、深い就寝で気づかないのか・・・ひょっとして事件に巻き込まれているのか


思わず海空はドアノブに手をかけた


カチャ


「先輩・・・開いてます」


無言で頷いた先輩は無線をとばす


ガッ

「506より本部。応援要請。マル被の逃走ルート上の民家にて不審な状況あり。安全確保のため捜索を開始したいが許可願う。どうぞ。」

ガッ

「本部より506。許可する。応援到着は10分後。」


先輩と頷きあって無線をイヤホンに変えて腰につけていた特殊警棒にいつでも出せるように手を伸ばす


ドアノブをゆっくりと回し、扉を開ける


「山川警察です。どなたかいらっしゃいますか?」


いまだ鳴りやまない携帯着信音に負けない声で暗闇に呼びかけるが反応はない。


懐中電灯で玄関を照らすと下駄箱の上には家の鍵と車の鍵が置いてあった。


合鍵で外出の可能性もあるにはあるが不自然さは増すばかりである


「失礼します」と声をかけ、玄関横の電気をつける。

玄関とキッチンへ続く廊下が明るくなった


飛び込んできたのは廊下についた血痕


事件性の確率が否が応でも上昇する


先輩と再度頷き合い、特殊警棒を抜きゆっくりと引き延ばす


慎重に進む


無言で一通り1階を見て回るが、キッチン、風呂場に手形のような血痕が多数散見された


嫌な予感が外れることを期待しつつ2階へ進む


全ての部屋は扉が開いていた


階段に近い部屋を覗くとそこに豆電球の明かりに浮かぶ家主と思われる人の無残な姿があった


明かりをつける。

ベッドの上では大量の血を吸って真っ赤に染まった寝具の上に横たわる人

出血量からも死亡していることが医師でなくても容易に想像できる状況である

一応、脈の確認をするがやはりこと切れているようである


残りの部屋も確認するが廊下に近い部屋以外に人の痕跡はなかった


ガッ

「本部より506。応援が到着。状況送れ。」

ガッ

「506より本部。民家2階にて死傷者確認。医療班を要請。また家内で多数の血痕あり。鑑識も要請する。」

ガッ

「本部了解。至急応援送る。」


第二の殺人現場となった民家に続々と多数の応援警察官が駆け付けてくる。


見知った警察官もいるが、見たことない警察官も混じりだしたので、捜査本部が設置され広域から応援が集まりだしていると予想された


・・・今日と明日は徹夜かな

なんて考えながら作業していると


ガッ

「山川公園で01発生中。付近のPCは至急現場に急行せよ。」


どうやら一連の事件に関係ありそうな無線がとぶ


発生中・・・


この無線を受け応援に駆け付けた警察官も最低限この現場に残して、次々に飛び出していく

先輩と引き継ぎを終え、病院に戻りPCへ乗り込み現場へ急行する


目的地へ向かう車内で


「先輩、01発生中って・・・」

「あぁ、かなり狂暴な犯人だし銃の使用許可も出そうだな・・・心の準備をしておけ。」

「はい・・・」


腰に付けたホルターをチラッと確認しつつも本当にその状況になって撃てるのだろうかと頭をよぎるが切り替える

射撃の訓練はしている・・・が・・・

実際に撃てるかどうかは、その状況にならないとわからないものである

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