第11話 北東北司令基地 教科履修センター
北東北司令基地は青森駐屯地周辺の市共用部転用と用地収用して、日々車両隊の訓練に明け暮れる。そのおかげかどうか分からないが、青森廃市は行政解消迄行かず廃市寸前に止まっている。
辛うじて青森廃市には人間が街にいる。冬は除雪車が回りきれず、全く生活に適さないが、そう言う時はリモートワークに切り替える。またお店に行くと、個人経営以外はほぼセルフレジに置き換わっている。そうやってるから、温もりがないと田舎を離れて、都会を目指す。先進化も程々にの例えだ。
青森廃市内の北東北司令基地は防衛特化部隊が大凡を占めるが、紛争予備地域なので最大人員を用意しないといけず、新人訓練も急務だ。その精神面のケアをする為にも、宿泊可能な教科履修センタービルも新設された。今俺達HASUクラブ全員は、ここに宿泊し教科履修を受けている。
法廷に上げられた俺は、開放後何かと忖度されて、いずも改魁のHASUクラブ計8人が、ひどく退屈な教科履修に付き合わされる。それはイレギュラー対応教科も、大凡は海上部隊でそれぞれに処理された事で、報告書の回覧で知っていた。
ああでも忘れたは、電子事例辞書参照可能なので、ああはいはいで思い出す。小テストも電子事例辞書参照可能なので、これ勤務査定に関係ありますか。あると言えばありますねと言う曖昧さ。
そうとは言え、教科履修の大きな割合を占めているのは、心理探報の教科だ。教科履修を全て受け持つ講師は、 衛生博士の安斎美千子一佐が担当する。授業、グループトーク、そう後は個別習熟だ。これは1日付ききっりで、精神が安定しているかも実は確認されている。
どうやって確認してるんだよも、重成曰く。千代子さんの距離いつも10cmだろう、ドキドキするだろう。俺はまあ、ターニャ、環、あれ次に千代子さんだ。身長178cmに、小麦色の肌、津軽系丸顔小顔美人、そして自衛隊には珍しいワンレングスロングで、博士とはそういう身なりでも認められているらしい。
そして履修教科を終えても、泊まり込みなのでセックスチェックがある。
重成から始まり、順番順番で俺にも回って来た。そう、フリータイムにごく自然に昔話を話して、その後美千子さんと一夜を共にした。
千代子さんは公言はしていないがバイセクシャルではあるらしい。奏にそれとなく聞くもニヤニヤするだけで、口を割らない。奏が俺に打ち明けないって事はヒエラルキーがあっさり代わった様だ。
そうこうで、俺は美千子さんとどうしたになる。
まあ、俺達の雰囲気は晩年の夫婦のそれになる。会話はするも淡々としている。でも話し足りないはまるで無い。千代子さんは朗らかに笑ってくれるので、NGワードなんていつの間にか無くなっていた。千代子さんに個人資料を査読されていたとしても、この安定感はなんだろう。どうしても錯覚する、ひょっとして結婚するんじゃないか。安斎美千子一佐31歳、但し寡婦だった。本人曰く、曖昧に旦那さんが事故死で、思い出すと悔しいですね。結婚、ああ、第3次計画寡婦で97%は再婚出来ませんしねと淡い吐息を着く。でも良い人いないのですか。私は私の分身と一緒にいるつもりは有りませんと、珍しく口を真一文字される。
そして夜になる。教科履修中なら、入室の際相部屋は分かる。でもどんな意図かHASUクラブは個人部屋として支給される。そこに千代子さんが、ああ夜ですね、このベッド空いてますよねで居座る。確かに空いてはいるが、2段ベッドの俺の眠る同じ段に潜り込んで来るのはどうだろう。美千子さんは俺の背中に張り付き、スヤスヤどころかしっかり、狙い澄ましている。お手つき有り有りと、筋肉質の胸を擦りつける。
「千代子さん、寝ないんですか」
「ええ、SEXしたら、気持ち良く寝れますよ」
恥ずかしくもないSEXのトーンを、俺は受け入れてしまう。当然何も言えやしない。
今の自衛隊の野営規範では、男女共同参画のあおりで、SEX禁止は削除されている。と言うべきか、男女恋愛は尊いものと、日本全国人口減の影響で尊まれる。最近の恋愛映画より、昔の恋愛映画が好まれる傾向は、障害多い方が燃えるますよねと。
「千代子さん、Notting Hill見ましたか」
「孝信さん、古い映画好きなんですね。でも、ああいう追いかけ方は、将来大破綻するでしょうね。私は追いかけさせませんよ」
そこからは、どこのタイミングでSEXすべきか悩むが、話の掛け合いが面白く事実上のピロトークになった。言葉が途切れると首筋に何度もキスをされ、千代子さんが痺れを切らして前に回り込む。そして、当たり前の様に唇と唇でキスし、弄りあって、昂まり、普通にSEXした。背徳感は一つも無かった。その手順はごく自然で論理的なものだった。男性と女性がいたら、何を躊躇するかだ。千代子さんが俺を好きなのは10回聞いた。でもそれは皆だろうで、俺は軽く受け流していた。
ただ俺のSEX基準は、相棒の環位なので、美千子さんは身長178cmもあると、愛撫が一関節足りず逐一足りずやり直しさせられる。こういう手順は実に厳しい。
その手順を踏んだ愛情により、俺の技量も深まる。そして精魂尽き果て、眠りに着くと、美千子さんはいつの間にかベッドを後にする。そして朝には、教官服を着た千代子さんと、何事も無かった様に普通に挨拶を交わす。確かに愛し合った。ただ翌日になると、千代子さんは、HASUクラブの誰かを愛さなくてはいけない。精神衛生上の割り切りなら、それは正解だろう。
俺の身体は美千子さんのお陰で火照りが戻ってきた。身長が近いせいで、頭と頭、目と目とが近すぎて思考があらかた入ってくる感覚は、とても得難い。気が付くとどうしても千代子さんを眺めてします。
◇
夢に健康的で艶かしい女性が現れ始める。それは雰囲気で分かる。ターニャ・スワロフスキーだ。審議で何かとターニャの写真を見せられたので、どうにも脳裏に残っている。ターニャ、と夢の中で叫んだ。そしてターニャは満面の笑みで微笑む。
はっと、起きると、下半身が濡れていた。小学生頃の懐かしい感覚、夢精だった。30歳を軽く過ぎてもやれやれになった。
俺は、まだ朝日の出ない二人部屋の個室を、着替えを持って繁々と抜け出す。不意に隣の部屋の扉が開いた。
「孝信、どうしたの」
「燕か、悪い夢を見た。シャワー浴びて来る」
「それ叫んだと思ったら、それか。うんおや、ふふ、そういう事ね」
「朝の点呼がもうちょい後だ。起こしておいてあれだが、しっかり寝てろ」
「了解、また後で」
ショートボブの立花燕の部屋の扉が閉じられた。ノホホンとしている割には、妙な感で俺と重成のダッシュを追い抜くのが燕だ。まあ、何か嫌な予感がするがまあ良いかだ。
俺は男女兼用浴場に、悟られず辿り着く。今この教科履修センターは俺達HASUクラブで貸し切りだから、それはそうだろう。部屋を出る前にティッシュで下半身をあらかた拭って来たが、いざ脱ぐと、青さが全開で芳しい。確かに勾留中は禁欲と言うか、そういう事を考える余地さえもなかった。性欲のメカニズムがブレてしまったのだろう。それで今、男盛りの反動があってもおかしくは無いだろう。嫌なコントロールロスだ。
心理面故の代謝はどうだろうには、そこは深く考えるのを止めた。ターニャにもう一度会える保証は何もないので、拗れたプラトニックなんて、美千子さんに話しても、運命を待ちましょうと、街角の占い師みたいな事を言われる。それより私とSEXしましょうと誘われたら。ターニャなんて事にどうしても心が奪われる。
そして、俺は浴場の椅子に座り、メンソールシャンプーを頭に擦り付け、ガーになる。何か続きそうだな、こんな夢精。ターニャの残像っていつ消えるんだろう。あんな笑顔、物騒な世の中で拝めやしない。全く、全部打ち消してしまいたい。
浴場の引き戸が確かにシャーと鳴った。
「孝信、お身体お流ししますね。汚れてるところはどこですか」
小走りの素っ裸の燕が俺の背中に張り付き、背後から俺のペニスを丁寧にミントソープで磨き上げる。おい、しか言えないが、その察しの良さに二の句が告げなかった。
「良い感じで勃ってる、よし、oK。夢精も、男子ってままあるよね。弟も夢精が激しくて、親にも言えないし、よく付き合ったよ。それでモヤモヤを解消して行くんだよね。気にしないで、こう言うの慣れてるから」
燕は俺の目の前に、片膝立ちで均整の取れた乳房を、俺の口元に差し出す。その直向きな上向いた乳頭につい含んでしまった。ついだ。
燕の話では、母乳出ないけど美味しいとは言われるらしい。誰がは勿論弟さんらしいが、他の方かはさてではぐらかし、よく分からない。
俺も正直に美味しいと言うと、燕は俺の空いた右手を空いた右乳房に誘った。勢いなら、押し倒しての一戦だろうが、相手は燕で、今もこの先もそういう対象でないので、美味しい乳房に縋り付くだけだ。
そして、燕がビクンとした所で、踏み込むのをやめた。燕の行く顔には、どうしても興味がない。
それから、前日の温度が残った半分の湯船に一緒に入る。
「そうだよ、ここ、見られたらどうしよう」
「今更だろう、いずも改魁の風呂小さくて、男女がほぼ全裸待ちなんだから」
「それってさ、孝信と重成はお風呂長いよね。いい迷惑だよ。君達はさ、」
「そう言いながら、全裸で割り込んで入るのは良い加減止めろよ」
「あのね、いたいけなお姉さんが体張って全裸で待っていたら、普通気を使って上がるよね、酷いよね」
「ああ、そう言う性癖かと思って無視してた」
「そう来るか、性癖、何てことよ、でも言い返せない」
「そうだろう」
「まあ、それよりね、いずも改魁解散なのかな」
「さあな、」
俺の相槌でも重い言葉は他意は微塵も無い。体感時間15分きっかり、燕を促して外に出た。燕は、俺の夢精した下着の香りを嗅いでは、妙なテンションを上げる。これこれ、生粋の男性堪らんよと浮かれる。そしてそのまま今日に反映された。燕の浮かれは更に浮かれ、うっすら悟った美千子さんに手厳しく怒られる。女の世界は直感が優先、理屈じゃなないなと、改めて刻んだ。
◇
日差しが鋭いが、うっすら分かる。鮮やかな夏の光線の中、俺に誰かが多い被さり、下半身に熱い体温が迫る。
「ねえ、」
「ターニャ、」
夢精の音はしないが、下半身にねっとりとした精液の違和感が来る。自分のものなのに、しっくりしない感じだ。
そして、部屋を後にすると。寸分違わず隣の部屋から、燕が左半分で見届ける。今日もまたどうせ、朝からご苦労してくれるんだろうと。
そして着替え場でそそくさと脱ぎ、男女兼用浴場に入る。椅子に座ると同時に、ついメンソールシャンプーのポンプを5回押して頭を撫で上げる。
そして、引き戸のシャー音。ただ、足音は二人分した。
キャキャの声が響き、俺の頭を洗い流す手以外に、知ってる二人分の感触が来る。声を振り分けると、燕に果穂。果穂、何故櫛引果穂が。
俺は、有無を言わされず、素っ裸の燕と果穂に大浴場のタイルに寝かせられる。燕は自らの太腿に俺の上半身を乗せ左乳房を吸わせる。そして、股間にはあんぐりと櫛引果穂が、俺のペニスを含む。いや待った心の準備が、でももう遅い。
櫛引果穂はシェイカーの交代要員で、普段は宮城にある自衛隊南東北情報統括本部の制服組だ。態々二足の草鞋を履かせているのは、シェイカーの標準搭乗査定をフィードバックしているらしい。
果穂曰く、働かせ過ぎ、無茶言うわ。それは仕方がないだろう。資質が無い人材がF7シリーズに乗り込むと、眼底に光源が1週間残って普段の生活に送れやしない。これはアワバックシンドローム、視床下部の危険を知らせる警告らしい。
最近ではホームビデオゲームで類似の現象が出る事が有り、その都度メーカーは半年の営業停止を喰らう。意図したもので無く、より視床下部にダイレクトに繋げた方が興奮度が上がるのプログラムだろう。興奮するプロダクトはどうしても必要だ。解像度の高い360度詳細映像認識、それにLSIが時代に追いついてしまった。やれやれか。
いや普段は借りてきた猫の櫛引果穂も厄介だ。いずも改魁に交代要員で来た時に俺がまず困る。冬は決まって士官寝室の俺の上段のベッドに潜り込ん混んで来る。だって孝信暖かいでしょう。ああ、これは普段環が背中に縋る事から、背中がカイロの体質になってしまったのだろう。いや、そんな便利に体質変わらないから、そういう雰囲気嗅ぎ取ってのそれか。さすが幹部候補の制服組。
いや、そうじゃなくて、俺は何故受け入れてしまう。そう、果穂はずっと眺めていられる優しいモデル顔だ。鋭角なのにフワッとしている。ここは薄化粧でもか。嫌いな所がまるで無い。違うな、それは、背中に張りつかれて分かるが、体質から醸し出される乳腺の香りだった。普通の若造なら、一発でたけ狂うだろうが、生憎俺は、俺の脳裏で環が然るべき姿で仁王立ちされて、いや良い香りだなと、深い眠りに吸い込まれる。ままスクランブルがあると、果穂が起こしてくれるので助かる。いや、それはおかしいな、果穂が背中にへばりついていないと、普通に起きられるだろう。果穂に言うと、その都度爆笑する。大丈夫、恋人はてんでいませんから。お父さんがIT系の常務だから、お見合いしか許されないのもどう思います。それ答えになってるのか。どっちでも良いんじゃない、だっていつ死ぬか分からないのよ、私達。ここで果穂のじっとりとした香りが俺を覆う。もう抱け抱けだろうが、果穂は勝手にレベル3つ上を行く上品で、その手に触れる事さえ禁じられる。その矛盾した高貴さが、乳腺を通じてフェロモンが出るのだろう。一線超えたら、勝手に俺の良い妻になるだろうが、先々富裕層の中でとんでもない捩れに巻き込まれ、俺の躊躇は改めて正しい筈だ。
そう今、俺のペニスを含む果穂は、今は何も纏わず、剥き出しのフェロモンが、俺の鼻腔をつんざく。
「果穂、止めろ、そう言う間柄じゃ無いだろう」
「それは殺生でしょう。ずっと添い寝して、いつお手付きされるかお待たせ過ぎでしょう、ここで発揮しないと。孝信さん、そもそもフェラチオされながら、倫理なんて、どうかしてますよ」
二の句が告げなかったのは、どこかで前戯技術マニュアルを拾ったであろうで、ゆうに環超えして、俺は煩悩が引き剥がせない。この俺が我慢しているのは、果穂の二十七歳ならではの淑やかせがむせ返るからだ。
いつかこうなると思って、俺は何処かで、果穂と壁を作っていた。ただ果穂も淑女である以上、平等に接しないと行けない。いや、むせ返る程の律動が来た、俺の射精は果穂の口の中で弾けた。
「すまない、果穂、」
「別に、孝信にはお世話になってるし、どこも嫌いじゃ無いですから」
好きとは言えない、その言い方が、果穂の利口さを示している。恋人はいないだろうが、そう言う割り切りの仲間はいる事だろう。結局そういう不器用さに、踏み込めないんだよ、果穂は、なんて、そんな関係を望んでいないので、口からぼやきさえ決して出ない。
そこから、定番の前日の温度が残った半分の湯船に一緒に入る。まあ、燕に果穂なら何だかんだで口は固いだろう。お湯足そうか。寮長にバレるだろう。それはそうだよねになる。
◇
あれから3週間。美千子さんの夜の授業を挟み、不思議と夢精は止まった。止まった要因はターニャが水着を着ていたせいだ。純粋に健康的だった。いや、果穂には都合3回フェラチオして貰ったので、これではいけないと大人の感性に戻って来れたかもしれない。
そして、俺の夢精はもう終わったからの懇願で、果穂のフェラチオは打ち止めとなり、早朝のシャワーと混浴を何故か3人で共する時間になった。いや正確には、無邪気に奏が来て女性のハーレム雰囲気の筈が、普段いずも改魁の浴室待機で全身知り尽くしているから、厳密にはハーレムとは言えない。
そこから、寛治、仁、潤太が来て、最後にお前ら楽しいぞと重成が来た。結果朝の結束会になって和気藹々になった。朝5時のハイテンション、もう付き合うさ。
◇
そして日にちは変わり、引き戸がシャーと開くと、入って来たのは千代子さんだった。それは紛争のお陰で、世間一般のファッション紙がマッスル傾向のあるスーパーモデル体系を重用している身姿を雄に超え、美しさと悩ましさを兼ね揃え頂点に立つ。どうしても男性は起立せざる得ない。当然男性皆下も起立している。
そして、美千子さんは風呂椅子をぐるっとこちらに回し座ると、凛と、孝信さん磨いて促す。ここでヒューヒューする筈が、美千子さんの肢体に男女釘付けになって、呼吸は溜め息がやっとだ。
俺は風呂から上がり、タオルを腰に巻いて、お磨きさせてもらいますと断ると、美千子さんは俺の腰のタオルをパサと剥ぎ取り、起立したペニスが顕になる。こそこそと、私に何が恥ずかしいのですかと剣幕が荒い。
そして、サーフィンで丹念に焼かれた小さなビキニ跡の小麦色の肌が色気を激しく放つ。千代子さんは衣服を脱ぐ際必ず消灯する。そして朝に帰るのだから、この肢体を鮮やかに見た事が無いので、それは皆同一に興奮も隠せはしないか。肩から入り、股間もでしょうと、千代子さんを素直な吐息が漏れるまま洗い流した。軽くしたの艶やかにあの色気を放つ。そして美千子さんの涙は、性交渉の時の様に潤んでいるが、俺は止まる。ここで美千子さんを押し倒して皆に晒してどうするんだと踏ん張った。
そして、前日の温度がやや残った半分の湯船に皆一緒に入る。女性は皆それぞれ美しいが、どうしてもトリを務めてしまう女性はいる。安斎美千子、心身一致で見目麗しい。皆は、気もそぞろで会話も浮かんで来ない。いざここぞで晒された身姿は、皆の想像を遥か上に言っていた。
「皆さん、今日の講義でお終いなのですから、コミュニケーションを取りましょう。私を存分に見ても良いのですよ。仮にも宿営の合同風呂に入って、こういう美人さんに気を取られたら、戦死しますよ」
皆は最もだになり。差し障りの無い会話になるが、美千子さんは朝6時の点呼があるからと巻く。巻いた話は俺達に関わる重大な査定だった。
「今回の教科履修で、皆さんの精神面の均一化が取れなかったら、HASUクラブの解散を私が上告出来ます。私としては、今も解散すべきと思っています。しかし、皆さんのリフレッシュぶりを窺うと、それはあるべきではないと、解散は回避しています」
「やはり、俺による全体責任ですか」
「ええ、南小路孝信さんのHASU2に先鋭的なバッチが流れた以上HASUクラブのリレーションによって、扱い切れないバッチがインストールされる可能性があります。現に閉鎖法廷で、興梠奏さんに扱いきれるかのバッチがインストールされています。北東北司令基地はこれ憂慮しています。ですが、何とかなるだろう。HASUクラブの看板は降ろせない。そこに私の今もHASUクラブの団結は揺るぎないの口添え。そして議決6:4の過半数獲得でHASUクラブ存続決定です。これからも必ずや職務に邁進して下さい」
「すいません、俺が問題を起こしたせいです。仮にも俺の異動は叶うものでしょうか」
「南小路孝信さんの所属隊異動はどうしても無いでしょう。F71BJは高度なリレーション機能を持っていますので、HASUクラブの次席のIRISクラブに異動しても、杞憂は付き纏います」
「それって、地上勤務の諭旨ですか」
「ええ、その為に私が身体を張っています。偉い方の指示を受けています。南小路孝信君は安斎美千子君とそれとなく大人の恋人関係に至り、定時で帰って、安斎美千子のお仕事を支えるべきだね。南小路孝信君なら主婦業も真面目でしょうと、國路蓮太郎北東北司令基地長官から密命を帯びています。そうですF71BJが幾ら、1×15の撃墜マーカーでも、兵隊一人で戦場の空気を変える事は出来ません。南小路孝信一等海尉が一人抜けても、弊害は起こりません。これは積極的指導です。私も毎日宿舎ではなく借り上げマンションに戻るので、掃除洗濯お食事、何より愛の溢れるSEXをして、世界で一番の家庭を作りましょうよ。孝信さん」
いや、環がとかがまず浮かんだが、積極的な安斎美千子衛生博士一佐に、呆気なく吹き飛ばされた。環とは一緒にいるだけで幸せかなと思うが、その先がどうしても見えない。
さて家庭とは何だ。美千子さんも頑張るけど俺も頑張らないと、二つの道が一つになるには結束しないだろう。そして、美千子さんのサーフィンを見ながらノンアルコールビールを飲む俺を、想像世界を醸し出す。案外有りかもしれない。
重成が訥に会話に加わる。
「いや、それは美千子さん、難しいと思いますよ。孝信はあのターニャ・スワロフスキーに惚れられていますから、遅い新規参入から一番の座を勝ち取るのは難しいかと思います」
「重成さん何をしたり顔を。でも、孝信さんとターニャ・スワロフスキーとはSEXはしていないですよね。プラクトニックですよね。あらぬ妄想で、孝信さんは夢精していたのは、スクランブルに支障を来たします。そういう邪さは大却下です」
「美千子さん、そこ、私が朝のフェラチオサービスをしたから、孝信さんは治りました」
「果穂さん、この教科履修センタービルでの隊員同士の恋愛行為は禁止されています。あなたは、規律を一体どうお考えなのですか」
「それって、美千子さんね、私、美千子さんに可愛がって貰ってますよね」
「はい。衛生博士は隊員に含まれません、教官の指導とはあらゆる愛情を注ぎ込むものです。奏さんの御理解が浅いのは、恐れず御相手に確認すべきです」
美千子さんの、余りの取ってつけた詭弁に皆が5分沈黙して、点呼近づいているで皆が一斉に男女兼用浴場を上がった。
それから、8時半の教科履修の最後の授業が始まる。教鞭に立つのは確かに安斎美千子衛生博士一佐だが、長いワンレングスの髪が艶やかに光り、そんじょそこらにいない女性をアピールしている。回って来た伝言リレーメモでは、球資堂の椿美麗ムースらしい。国産品コスメはもはや高級品なのに、ここで投入か。
そして、安斎美千子衛生博士は教室を普段は満遍なく回るが、俺の周辺ばかり回って、長い艶やかな髪を翻させる。パサ、フワッ。そして俺に敢えて難しい質問ばかり出して、ほらここの教科履修書に載ってますよと、優しい口調で、長い艶やかな椿の香るの髪を掬い上げて、最後の猛アピールに入る。
重成からの伝言リレーメモではどうにかなってみろ。お前なーの視線を送るが、重成はシカトを決め込む。お前の得意の寡婦の落とし方教えろと伝言リレーメモを送るも。BE Natural!。帰って来たメモを重成に思い行きり投げつけるも、安斎美千子衛生博士にとんでもない反射神経でインターセプトされる。
「そうなのですよ、私もこれを言いたかったです。南小路孝信一等海尉の素敵なところは自然なところです。ここはどうかそのままでいて下さいね」
安斎美千子衛生博士はここぞとばかりに、両手で俺の手をおくびもせず包み込む。そして、ここで盛り上げないと痛い目を見ると察したHASUクラブが盛大な合いの手を送る。
そして昼の津軽そばでは美千子さんが積極的になる、ああ髪留めを忘れました、孝信さん後ろで髪の毛抑えて貰えますかと、俺は髪の毛を両手で束ねる、食べ終えるのを待つ。いや、今日に限って何故は、朝の混浴で女性のあざとさが吹っ切れたらしい。
そして午後の授業は、教壇の隣に俺の机が移されて、イマージュ三沢店駐車場不時着事件を状況対応講座として、長々と話させられる。しかも死角を良いことに右太腿に、安斎美千子衛生博士が手を置く。いや、これ以上エスカレートすると、女性美千子さんが何をしでかすか分からないので、俺は全く饒舌ではないが、話せる範囲で裁判の前、中、後も話して、何とか終了のチャイムが鳴る。
ここで安斎美千子衛生博士が、皆さん立ちあがって拍手をと促しながら、また死角を良い事の俺の柔らかいお尻を丁寧に揉む。その顔は心からの笑顔だ。
夕方は金曜定例の海軍カレーにイガメンチになる。ここで美千子さんが子供の様に駄々こねる。もうやだ最後の晩餐なのに、また髪留め忘れました、私ってバカバカと頭をポコポコ叩くので、それとなく俺がまた髪留め役になって、やたら口に運ぶのが遅い食事に付き合った。
さて、漸く俺が食べる時に皆が上がり切って、居残った美千子さんが俺の顔を微笑みながら、美味しいですよね、誰かと一緒に食べると格別ですよねと問い掛ける。面倒なので美千子さん、ありがとうございますを繰り返した。
食後のフリータイムは、ホールに誰もいなかった。重成、仕組んだか。美千子さんが誰もいないのなら、私の部屋に来てお話しましょうになった。瞳が潤んでいたので、はいとしか言えなかった
美千子さんの部屋は半指名部屋で、借り上げのマンションより長くいるそうだ。そして書棚に飾っている写真立ては、美千子さんの長身をさらに10cm上を行く一回りさで、死に別れた旦那さんらしい。俺とは3ランクも違う男らしさを纏っており、何故俺に好意を寄せるかが疑問になった。いや何か知ってる、、俺は、この旦那さんを。
美千子さんが、死に別れた旦那さんを語る。それは、 高性能掃海艇つづき艇長一佐尾花純也だった。同じ海上自衛隊であるが、奥方の姓が変わっていては気付きようもなかった。
高性能掃海艇つづき沈没事件は5年前に話題になった。海里ギリギリ内の今時機雷撤去作業で沈没するかと、皆が首を傾げた。
ただ防衛省の見解としては、こう添えた。ロシアのステルス潜水艦による撃破。沈没前後のログと、生存者5名の証言を得たが、つづきは通常任務を遂行しておらず、突き上げる何かから即エンジン部が爆発して沈没したと。
ただこれはあり得ないになる。2020年代からステルス潜水艦の構想はあったが、SLBMを保有する以上有人船が原則でどこの国も完全無音は不可能だった。ステルス潜水艦の搭乗の有人無人の論争はあったが、開発構造上不可能と今でも認定されている。
結局は沈没事故が有耶無耶になり、流氷にぶつかっての何か。世間からは、尾花純也艇長一佐は不名誉な殉職扱いをされた。
「それはもう良いのです。互いに危険を覚悟で日本国民を守る職務を全うしているのですから、何れかの死はもう割り切ってます。ただ孝信さんは、声の響きが優しく、そのう、孝信さんの声を聞く程に、私は身体が熱って来るのです。愛すべき対象の方、孝信さんの方からすると、だらしが無いお話ですよね」
「今は、プライベートの時間です。美千子さん、俺の為に、心を曝け出してくれて、感謝しか有りません」
俺達はごく自然に、額が合わさり、舌を絡み合わせ、美千子さんのタンクトップを下から掬い上げると、そこからは激しい男女の営みになる。夜20時から始まり、就寝の消灯がされても貪り合った。そして朝日が薄らの頃に、慌てて男女兼用浴場に飛び込み、急いで互いを洗い合った。ただそれも刺激になり、浴場で超短く一回致した。何をしてるんだも、お互いの粘液が混ざり合っては流石に出立式に礼を欠くものだ。
◇
三沢改修基地行きのシャトルバスの前で、簡略の出立式を拝領した。1ヶ月間の職務ご苦労様でしたと互いに労う。
三沢改修基地に着任した所で、何をするかは詳らかになっていない。ただ何らかのオールチェック整備修繕中のF71BJのチェックはするだろうとは思っている。
シャトルバスに乗り込む際、もう一度安斎美千子衛生博士と握手をするのだが、俺の番でへたり込みしゃがみ込んで泣き崩れた。皆があーあと言いながら、俺を前にずずっと押し出された。
「美千子さん、体調悪くては、三沢でサーフィン出来ないですよ。海水が冷たくなる迄来られますよね」
「あっつ、はい、そうでした。ずっと詰めていましたけど、私達地上勤務は土日はお休みですから、行きます、三沢に絶対。でも、孝信さんに勇姿を見られて惚れられたらどうしましょう」
「上官として、安斎美千子衛生博士を尊敬いたしております」
「南小路孝信一等海尉を、優秀な士官として生涯忘れず、私もより職務を励みます」
互いに着帽敬礼のまま見つめ合った。これで良しという所で、重成にシャトルバスに引っ張られて、 北東北司令基地教科履修センターを離れて行く。美千子さんは美しい姿勢のままで、小さくなっても俺達を見送る。
「孝信、分かっているだろうが、寡婦との恋愛は、第3次計画寡婦で戸籍には入れない。逃げ道の養子であってもだ。でも愛人としては付き合えるのが、この東日本の通例だ。子供が出来ても、本妻を大切しろよ」
「千代子さん、結局真面目だろ、どうなるんだよ、俺は」
「孝信、女の情念は強い。だからこそ遇らえ。第3次計画寡婦手帳でその辺の互いにの執着は禁忌として書かれているから、一度読むべきだな」
「それで、重成は何人愛人がいるんだよ」
「正義の味方は、迂闊に正体は晒さない。孝信も正義の味方だからな」
「人でなしだな」
「それは紛争が終わって、10年経ってから、考え方を改めるさ」
人通りがほぼいない青森駅を経由して、青森廃市を出ようとしている。戦争がなければ、朽ちかけている商店街は華やかだっただろうか。いや、それ以前に人口が減り続けた以上、見た目の生活は変わりはなかっただろう。
とにも、ある程度の人口が担保されないと、いつでも悪の手先は国境線を超えて触手を伸ばす。どうしようも無い国になってしまったが、俺達は日本国民を守らなくてはいけない。
Less than Zero or More 判家悠久 @hanke-yuukyu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Less than Zero or Moreの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます