第66話  リエンファと結ばれる

 ブリジットの件も終わり、あれほど賑わせていた火竜騒動が落着して、アドリアンと別れるとマークウェルは、久しぶりに休暇を取った。


 女は、何処にでもいたがマークウェルの気に入った古王国ドーリアの王都、アスタナシヤの屋敷には、女はいなかった。

 屋敷の管理を任せている通いのおばさんが来てくれるだけだ。

 一年前にようやく、場所が気に入って手頃な物件が見つけたのだ。

 リエンファと住むつもりで手に入れたのだ。

 愛してるという事ではない……が、生まれた時から知っているリエンファのことは、妹のように思っていた。

 兄弟のいなかった、マークウェルと不思議な力のせい赤子の時に親に捨てられたリエンファは、村の長老の婆の若馨クゥシンのもとで育てられ、本当の兄妹のように仲が良かった。


 屋敷を買った時に、手紙を書いたその日にリエンファはやって来た。どうやら、エル・ロイル家の当主のカーティスに結婚を迫られていたようである。

神殿も、聖女としてリエンファを認めて、彼女を縛り付けようとした。

それが嫌での銀の森からの出奔であったようだ。

 あの小さな、リエンファが結婚の話があるとは…… 早いものである。

 マークウェルの中のリエンファは、12歳の時に別れた彼女の姿で止まっていた。

 実際は、もう20歳になっていて、女盛りだ。


 ロザリンデも色香が漂うようになっていた。

 エマとは、完全に遊びだったが、ギルドの仲間をまた、完全に敵に回したことをマークウェルは気付いていない。


 マークウェルは、屋敷の二階で心地良く休んでいた。


 海に面したアスタナシヤは潮の香りがした。

大きなベッドのある寝室にリエンファを招き入れ、この日リエンファは女になった。

 マークウェルの人生で、一番幸せな時間だったかもしれない。

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マークウェル英雄譚《後世に名前が語り継がれなかった男の話》 月杜円香 @erisax

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