結ぼうとしたその決心こそが、凶(今日)を乗り越えるための力かもしれない

エケコ人形に端を発した惨劇に立ち向かった少年の物語。
本作を読み終えた時、自分はなんと擦れてしまったことかと天井を仰ぎました。

作中ではシャーマニズムの他、「呪(まじな)い」や「占い」といった見地からもしばしば言及がなされます。
中盤で海くんが覚悟を決めるに至った着想がとても印象的でした。

>>大吉は喜んで信じるが、大凶は木に結んで置いていき、内容などはまるで信じない。
>>つまり、悪い結果が出た時にだけ、対処法があるのだ。もし、今の僕が、占いの悪い結果と同じならば、僕にもきっと、対処法があるということだ。

この文を読んだ時点でもハッとしましたが、読了した今になると、より深く感じます。
おみくじを枝に結ぼうとするのは、ひいては大凶を振り払って吉(幸福・平穏)に向かいたいがためです。
しかしここで採ることのできる選択肢はそれだけではありません。
凶が出たショックに頭を抱え、肩を落として境内を去る人もいるでしょう。
そもそも凶なんか入れておくんじゃねえと舌打ちをして、ぐしゃっと握りつぶしたおみくじを投げ捨てて帰る人もいるでしょう。
「サイアクなんだけど~!え~○○ちゃんは大吉なの~?いいなあ~」と笑い合って、次の瞬間には別の話題になっている人もいるでしょう。

であれば。
大凶のおみくじを枝に結ぼうとした人の行動力こそが、吉を招くことができるのだといえないでしょうか。
半信半疑かもしれない。たまたま木に結ばれた他のみくじが目に入ったかもしれない。そういう風習があると教えられ、子供のころからの習慣でやっているだけかもしれない。
それでも、結んだ。結ぼうとした。

だからこそ、海くんはカラスの導きによって『紫苑』と出逢えたのだと思います。
そうして彼は「供養」を経て、生まれ変わることができました。


「悟」という字は「吾の心」と書きます。
宗教観という言い方をすると人によっては胡散臭く思われるかもしれませんが、清い心持ちで在ろうとする意識自体は大切なことだと思います。
そうしてひとつひとつに真摯に向き合うことではじめて、大難を小難に、小難を無難に、そして幸福へと変えていけるのかもしれません。

大人になってからは、星座占いを目にしても読み込もうとなど思わなくなりましたが、久しぶりにチェックしてみました。
マイナビニュースの占い記事によりますと、本日2月4日のやぎ座は8位で、ラッキーアイテムはバスローブ、ラッキーカラーはオフホワイトだそうです。オフホワイトは歯磨き粉の色でいいとして、バスローブなんてサレオツなものは持っていないのですがどうしましょう……買うか?笑



さて。次はあなたの番です。
今日のあなたのラッキーアイテムは何でしたか?



最後になりますが、夷也さまに感謝を。
今回もとても素敵な物語をありがとうございます。

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