泡沫に消えたはずの記憶が、鈴の音とともに蘇る。

女の子の初恋相手でランキングを組むと、決まって入ってくるだろう「親戚のお兄さん」。周囲のガーキな男子たちより頭ひとつ抜けた存在は、頼もしく見えるのだとか。
一方、男子は……というと。
あまりそういう話は聞きませんが、男子にもけっこうあると思うんです。「田舎で出会ったお姉さん」の思い出。

せっかくの夏休みや正月休みに連れて行かれる親の実家。周囲に遊ぶところなんてなーんにもないし、もちろん友達もいない。
ましてや「お兄ちゃんでしょう」といわんばかりに放任され、構ってくれるのは年寄りばかり(ちょっと失礼でしょうかww)。
そんな、ある意味で異界とも呼べる田舎で出会ったお姉さん。
大抵の場合、向こうはこちらを子供として扱っていますから、素というものがうかがえます。
クラスのおしゃまな女子とは全然違う温もりや湿度。お姉さんと同年代の男子ですら見られないだろう表情。
子どもながらに芽生えた淡い慕情。

現実では得てして、「その後」はありません。だいたいお姉さん側が進学や就職で地元を離れ、そのまま結婚し、帰ってこないからです。
よしんば地元に戻ってきていて再会できても、そこにはもう大人同士のお付き合いしかないでしょう。

そんな、遠い記憶の彼方に泡沫として消えてしまうような思い出も、フィクションでなら「その後」と再会することができます。
憧れたままのお姉さんに、ちょっぴり成長した自分で。

前段が長くなりましたが、本作はそんな、田舎のお姉ちゃんといちゃいちゃ甘々するお話です。
プロのシナリオライター・脚本家の方が描いているとあって、会話のバリエーションは圧巻の豊富さ。また、お姉ちゃんの距離感がバグっている理由にもきちんと背景が用意されている緻密さがあります。
2.5次元コンテンツだからこそ味わうことのできる、夏の原風景。必見です。