第19話 地獄からの使者

「あと一人か…」


 佐々木は倒れた星谷と双葉を担ぎながら駐車場へと向かう。駐車場に着くと道中ガマたちと出会う


「おや皆の衆、随分と珍妙な髪形になっているな。あふろへあーと言ったところか。その様子だとあの爆発に巻き込まれたと見るべきか?」


「そうや、石田はんが「最後自爆するしかねぇーーーー!!!」なんて言いながら盛大に自爆しおってな。ほんま、いい迷惑やったで。」


「同感」


「被害はあの場に居た俺含めた全員だ、敵味方含めてな。」


 ぶっ倒れている石田、松本、宮本を両脇で抱えてガロウは言った。


「おや、ガロウ殿まで巻き込まれたいたとは。どうやら最後に残ったのはガロウ殿ではなかったのだな。」


 駐車場の仮設テントの横に止められたバスの近くに佐々木は二人を寝かせる。


「お前が星谷を倒したのか?」


「如何にも拙者が倒したが。」


「戦ってみてどうだった?あいつの強さは?」


「不思議であった。」


「不思議?」


「拙者、相手に初見の状態を維持させる技術を会得しているのだが、星谷殿と撃ち合っている間、徐々に彼が成長しているような気がしてな。いずれ、また幾度か撃ち合う機会があれば拙者の技術が打ち破れれるやもしれないでござる。」


「さらっとすごいこと言わんかったか?」


「あいつも成長してるんだな…」


「拙者、まだHPえいちぴーが残っている故、また戦場に戻り最後の一人を探しに行ってくるでござる。では…」


 そう言いながら佐々木は戦場へと戻っていく。


「疑問:佐々木様には勝ち目がないのでは?」


「まあ、そうやろうな。生存能力だけなら間違いなく最強な奴が一人おるしな。」


「俺も数回しか会ったことないから覚えてないが、あれだろ?嚙み切れない肉の筋みたいなやつが一人いた気がする。」


「提案:当機体は、どちらかと言えば消費期限切れの生モノでは?と考えます。」


「みんな口悪いなあ」


「あら、帰ってきてたの。モニターで見てたけど、星谷こいつもやるようになったじゃない。」


「あれ、ファーストキスを奪われたことが、そんなにも悔しいんかいな?」


「ああ、あれか。」


「正直言って羨ましい。」


「(無言で馬場に鞭を打つ)」


「ヒヒンッ!?」


「ガマ、集合。軽くひねってあげるからこっち来なさい。」


「あっ、ごめんなさい。や、止め!耳を引っ張るな!痛たたた...」






 一時間後


「うぉっ!?」


「おっ、目覚めおったか。おはようさん」


「えっ?ああ、おはようって、あっははは!何だその頭!アフロじゃねぇーか!似合わなねー!」


「好きでアフロになっとる訳やないわ!」


「そうだ!バトロワはどうなったんだ!?まだ続いてんのか?」


「それなら向こうを見たらええ。」


 そう言われて立ち上がり、バス内に設置されたモニターを見る。そこには、佐々木と後もう一人、右手にチェンソーのような剣を、左手に拳銃を持つ男が今もなお戦闘を繰り広げていた。


「今見に来たやつもいるだろうから、俺ちゃんが特別に自己紹介してやろう!」


「?」


「犬笛に咽び泣く、きのこ狩りのケツ十字キラーでみんなの隣人。地獄からの使者、デンジャラスゾンビさんだ!」


「一体、誰に向かって話しかけているのでごさるか…?」


「そりゃもちろん。この画面を見てるお友達にだよ。佐々木ちゃん。」


 画面の前に映り込むこの男。面白いが、なんか怒られそうな気がする。


「何だぁ…こいつ…?」


「何だぁ?とは失礼だね。俺ちゃんのカッコいいセリフを聞いといて、その反応はないんじゃなぁーい?」


「話しかけて来やがった!?」


「あいつの名前は山田ヤマダ・アンディー。ZONE:ゾンビで不死性を持っとる。」


「不死ってまじ?死なないってこと?」


「そのとおりや」


「つまり、HPが尽きても1は残り続けるのか…もう、チートや、チーターやろ、そんなん!」


「それでもお前は三位まで行ったんや、すごい事やで。」


 画面を再び見る。すると佐々木が燕返しの構えを取る。


「模倣剣「燕返し」」


 円弧を描く三つの斬撃の軌跡がアンディーへと襲い掛かる。


「甘いぜ!」


 チェンソーで二つの斬撃を受け止め、拳銃で最後の斬撃を受け止めた


 ように見えた次の瞬間。アンディーの頭が跳ねる。


「え、死んだ?」


「いや、死んどるが、あれは生きとる」


「そんなバカなこと…えぇーーー!!??」


「これでは埒が明かないでござるな。」


 佐々木は刀を納め、諦める。


「しょうがないでしょ、俺ちゃん不死身のゾンビちゃんなんだからさ☆」


 アンディーは飛んで行った自身の頭を手に持ちながら話す。


「もうギブアップでござる。拙者、これ以上無駄な体力を消費したくないでござる。」


 佐々木は、近くのカメラに向かって話しかけ、降参する。アンディーは、自分の頭をお手玉のようにくるくると空中で回しながら頭がもとに位置に戻し、頭と首をぐりぐりと押し付ける。


「えー!もうチョイ遊ぼうぜジャパニーズサムラァイさんよお~!俺ちゃんまだ元気ビンビンなんだけど~」


「これは仕方がありませんね。佐々木君、君の意見を尊重して辞退を認めましょう。実技テストバトルロワイヤル優勝は山田ヤマダ・アンディー君です。」


「あざーす!!」


「まあ、出来レースではあったが。Dr.カウザー、これナーフが必要では?」


「以後はZONEの発動回数に制限を設けた方がいいですね。皆さん、よく頑張りましたね。これで実技テストは終了です。お疲れさまでした。皆さん疲れていると思いますので、今日の学校はここまで、皆さんバスに乗ってくださいね、学校まで送り届けますので。」


 バトロワが終わり、バスで学校に帰った俺たちは各々の帰路に着く。


「にしても今日疲れたなあー。これでまだ13時ってマジ?」


「おおマジ。それに腹も空いてきたな。マクドでも行くか?」


「マックな」


「マックでしょ」


「これが地域ギャップかいな」


「でもマック遠くない?あそこまで行くとなると結構歩くだろ?」


「それもそうね。ガマ、あんた頭回らなすぎない?」


「なんかすごく悔しい」


「こっから近くだと「日本の海」か「ブロンコビリー」くらいじゃね?


「どっちにしろ金がかかるわね。」


「労力をとるか、金をとるか…」


「そうだ。自然界に行こう。」


「何でまた自然界に行くのよ」


「だって、火野さんの家はどちらかって言ったら自然界だし、俺もっとうまい食材あると思うんだよね。」


「家も近いしアリやな。」


「ええー」


「賛成多数や。素直に従いいや、キリエはんもストレス溜まっとるしいい機会なんやないんか?」


「キリエ先輩。俺、もうちょっと気を付けるよ。」


「星谷もそう言っとるんやし…」


「あんたのせいでストレス溜まってんですけどー??」


 その後自然界にてキリエが大暴れし、イノシシ型を複数体ぶちのめして一週間ほどイノシシ肉生活となった。 





 後書き

 アンディー君は別に第四の壁を超えてる訳じゃなくて、超えてるつもりで話してる。だがら誰もいないところで「ちょっとスタッフ!」とか言ってる狂人、デップー枠。

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ZONE~地球曰ク<生命ハ、奇妙デ、新シイ、進化ヲスルモノ>ラシイ~ 葉分(ようぶん) @hapun

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