今世で継母にイジメられ、前世では寝取られてしまい、婚約破棄・追放・そして……。今世では聖女になり、婚約者に溺愛されて幸せになりたい。
のんびりとゆっくり
第1話 わたしは婚約破棄を宣言された
わたしはブリュレットテーヌ。
ボルドリックス王国ウスディドール王太子殿下の婚約者。
甘いものが大好きなフィスラボルト公爵家の令嬢で金髪隻眼。
冬、十二月下旬のある日。
わたしはウスディドール殿下に、
「わたしウスディドールは、ここにいるフィスラボルト公爵家令嬢のブリュレットテーヌとの婚約を破棄する!」
と宣言されてしまっていた……。
今日わたしは、王宮にある謁見の間に案内された。
わたしはウスディドール殿下と婚約したということで、一週間に一度、王宮に招待されるようになっていたのだけれど、いつも行くところはウスディドール殿下の執務室だった。
それなのに今日は、ウスディドール殿下の執事によって、いきなりこの謁見の間に案内をされたのだ。
執事にその理由を聞いた。
すると、
「ウスディドール殿下が国王陛下と王妃殿下の前で、正式な話をしたいそうです」
という返事が返ってきた。
これだけではよくわからない。
しかし、それ以上のことを聞いても、返事は返ってここない。
仕方がないので、ウスディドール殿下に直接聞こうと思ったのだが……。
謁見の間に入ると、そこには国王陛下と王妃殿下、そして、ウスディドール殿下がいた。
それだけではなく、国王陛下の側近や重臣たちも勢ぞろいしていた。
この中は厳しくて冷たい雰囲気に包まれている。
わたしはとにかくウスディドール殿下にこの状況を聞きたいと思っていた。
しかし、ウスディドール殿下は、国王陛下と王妃殿下が座っている場所のそばにいる。
これでは近づいて話をすることができない。
決められた位置までしか行くことはできないのだ。
とにかく話をまず聞くしかない。
そう思ったわたしは、決められた位置まで行くと、定められた礼儀作法通りの形をとった。
そして、居並ぶ国王陛下、王妃殿下、ウスディドール殿下に対して、
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
と言った後、頭を下げた。
すると、国王陛下は、
「お前は今日、なぜここに呼ばれたか、その理由を存じているか?」
と聞いてきた。
顔色が良くない。
国王陛下は、一年ほど前から体調がすぐれなくなっていて、病床に臥すことが多くなっていたので、王妃殿下とウスディドール殿下にかなりの権限を委譲していた。
とはいっても、ウスディドール殿下の方には、軍隊を動かす権限や、王国法を越えて命令をすることができる権限を委譲されていたので、事実上はウスディドール殿下がこの王国の権力者になっていた。
わたしも国王陛下と謁見する度に、その体調が気になっていたのだけれど、今日の国王陛下は、より一層弱々しい姿になっているように思える。
このままだと病床にまた伏せてしまうのでは、と心配してしまう。
「申し訳ありませんが、存じておりません」
「そうか、何も聞かされていないか……」
国王陛下はそう言うと、ため息をついた。
気力を失ってきていて、疲れがたまってきているように思える。
だが、国王陛下は何とか気力を少し取り戻した。
そして、
「今日、これからのことは、ウスディドールが仕切ることになる。もちろん、その仕切る内容については、わたしも承知し、そして、既に承認している。これから話すウスディドールの言葉は、すべてわたしの言葉だと思うように。そして、従うように」
と厳しい表情で言った。
重臣たちは一瞬、困惑の表情を浮かべるものの、すぐに頭を下げて、従っていく。
これからウスディドール殿下が仕切る内容というのは、一体どういうものなのだろうか?
なかなか予想できないところではあるのだけれど、国王陛下の表情からすると、少なくともわたしにとって有利な話ではなさそうだ。
ただ、この時点において婚約破棄ということは、心の中に浮かんでくることはなかった。
ウスディドール殿下とわたしは政略結婚で、現時点では仲がいいとは言えない。
むしろ仲は悪い方なのだけれど、それでも、
「婚約破棄したい」
とウスディドール殿下から言われたことは、今まで一度もなかったからだ。
ウスディドール殿下は何を言うのだろう?
わたしがそう思っていると、ウスディドール殿下は席から立ち上がった。
そして、
「皆のものよく聞け! これからわたしは重大な宣言をする!」
と言った。
緊張する重臣たち。
わたしもだんだん緊張してくる。
ウスディドール殿下は、心を整えた後、
「わたしウスディドールは、ここにいるフィスラボルト公爵家の令嬢ブリュレットテーヌとの婚約を破棄する!」
と宣言した。
重臣たちから湧き上がるどよめき。
「婚約破棄」という言葉。
わたしは最初、その言葉の意味するところを一瞬、理解ができなかった。
それほど予想外の言葉だった。
重臣たちにとっても予想外のことだったのだと思う。
わたしはわれに返ると、
「それはなぜでございますか? お戯れでおっしゃっているような気がいたしますが」
と反撃に出る。
わたしの心の中では、ウスディドール殿下が戯れ言を言っているのでは、という淡い期待があったのだ。
しかし、ウスディドール殿下は、
「戯れで言っているのではない!」
と怒りながら言ってくる。
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