第4話 反撃をしたいわたし
今、ここまできてしまっているのは、王妃殿下の了解を取りつけ、それにより国王陛下の了解も取り付けているということなのだろう。
それにしても王妃殿下がわたしの方を見て笑うとは……。
ガックリしてしまう。
しかし、このままガックリしているだけではどうにもならない。
なんとか反撃をして、婚約者の座を奪い返したい。
そう思っていると、ウスディドール殿下は、
「みなのもの。ご苦労であった、下がってよいぞ」
と重臣たち言った。
それを聞いた重臣たちはホッとした様子。
ここに重臣たちが呼ばれていたのは、正式な婚約破棄と婚約の場だったからだ。
重臣たちはただ承認をするだけの存在でしかないが、だからこそここにいる意味がある。
とはいうものの、中にはわたしに同情する人もいたと思う。
そうであればわたしも少しは救われる気がするので、そう信じたい。
重臣たちは、国王陛下と王妃殿下、ウスディドール殿下とオギュレリアさんにあいさつをした後、この部屋を去っていくのだった。
残されたのは国王陛下とその側近二人、そして、王妃殿下、継母とオギュレリアさんとわたし。
その他に近衛軍の兵士が数人部屋に入ってきていた。
ウスディドール殿下は、
「父上、近衛軍の指揮権を移譲していただき、ありがとうございます。後はわたしに任せください。もしわたしたちに対し反撃をしてきた場合は、打ち合わせの通りの処置をいたします。その権限も与えていただき、ありがとうございます」
と言った。
それに対して、国王陛下は疲れていて、返事をするのもきついようだったのだけれど、
「後は頼んだぞ。ウスディドール」
と言ってなんとか立ち上がった。
「ありがとうございます。父上」
ウスディドール殿下がそう呼びかけると、国王陛下は側近の二人に抱えられながら、部屋の外へと去っていった。
わたしは国王陛下の体調が良くないことに同情はしたものの、それは一瞬のことでしかなかった。
ウスディドール殿下が言ったことが気になったからだ。
「わたしたちに反撃をしてきた場合、打ち合わせ通りの処置をする」
名前こそ出してはいないが、わたしのことを言っている。
ただ、処置とは何だろう?
既にわたしは婚約を破棄されている。
これだけでも思い処置だ。
これ以上の処置をとられることは本来ないはずなのだけれど……。
わたしがそう思っていると、ウスディドール殿下は、
「どうだ? きみはオギュレリアを見て、自分が王妃となるのにふさわしくないということが良く理解できたと思うが、聖女でないことはもちろん、容姿もその人柄もすべてこのオギュレリアに劣っている。オギュレリアはわたしに対して、甘いアプローチを熱心にしてきてくれた。これがどんなにうれしかったことだろう。そして、わたしは身も心もオギュレリアの虜になったのだ。これほどの女性はいないと思っている」
とオギュレリアさんの方を見ながら、うっとりした様子で言った。
「ウスディドール殿下……」
ウスディドール殿下の方を見て、オギュレリアさんもうっとりしている。
そして、ウスディドール殿下は、オギュレリアさんの手を握り、
「この通り、わたしたちは心も体もラブラブなんだ!」
と言った。
顔を赤らめ、恥ずかしがるオギュレリアさん。
この二人の仲睦まじさがこちらにも伝わってきた。
お互いを見合って、うっとりしているというこの状況。
わたしはこの二人が、既に一線を越えていることを強く認識させざるをえなかった。
わたしはまだ手でさえも握ってもらったことは数少ないというのに……。
その瞬間、わたしの心の中には、「寝取られ」という言葉が心の中に浮かんできた。
そして、激しい頭痛に襲われる。
ここで頭が痛いというと、なおさら嘲笑の的になるので我慢した。
幸いにもそれは短い時間でおさまったものの、気分は良くない。
すると、ウスディドール殿下は、
「お前はこのオギュレリアには何もかも及ばない。特に性格の面では雲泥の差だ。婚約を破棄されてあたり前だったのだ。全く、お前と婚約してしまった為に、余計な苦労をすることになってしまった。そのことをよく認識し、わたしに詫びることだ」
と厳しい言葉ではあるものの、想像以上に怒りを抑制した口調で言ってきた。
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