第3話 わたしから婚約者を寝取った人と継母
そして、ウスディドール殿下は、
「みなのもの、わたしの新しい婚約者を紹介しよう。さあ、入ってきなさい!」
と大声で続けた。
すると、扉が開き、二人の女性がこの謁見の間に入ってきた。
わたしはその二人の姿を見て、大きな驚きに包まれてしまった。
継母、そして、わたしの同級生でありブルリルト公爵家令嬢のオギュレリアさん。
今日、この場にいるはずのない二人。
その二人は、わたしを全く無視する形でウスディドール殿下のそばに行く。
なんなの、この人たちは!
ますます腹が立ってくる。
ウスディドール殿下は、オギュレリアさんの隣に立ち、
「ここにわたしは、聖女であるこのブルリルト公爵家令嬢オギュレリアと婚約することを宣言する。この女性は、これから王太子妃となり、王妃となっていく。わたしだけではなく、このオギュレリアにも忠誠を誓うように!」
と宣言した。
重臣たちは一瞬戸惑ったようだが、すぐに拍手をし始める。
かつてわたしが婚約者になった時もこの謁見の間で宣言を行い、同じ出席者が拍手をしていたのだった。
それなのに、もうわたしのことなど存在もしていないような態度をとっている。
仕方のないことだと思うのだけれど、それでも腹立たしさが上乗せされる作用がどうしてもある。
そして、勝ち誇ったように笑うオギュレリアさんと継母。
王妃殿下も笑っている。
すべてわたしに対しての嘲笑だ。
それにしてもなぜ継母がここにいるのだろう?
わたしはそう思ったのだが、すぐに理由を把握した。
継母はもともとブルリルト公爵家の出身。
オギュレリアさんとは叔母と姪の関係になる。
オギュレリアさんは幼少期に母親がこの世を去っていて、それ以降は、継母がオギュレリアさんの面倒を見ることが多かった。
その間、継母はオギュレリアさんをかわいがったので、この二人に間には、固い絆が生まれていた。
継母はやがて、わがフィスラボルト公爵家に嫁ぐことになり、ブルリルト公爵家を去ることになったのだけれど、オギュレリアさんは別れるのがつらくて大いに泣いたそうだ。
継母はフィスラボルト公爵家にきてからは、わたしとは仲違いしていたものの、お父様とは仲睦まじかったので、子供の誕生が期待されていた。
もし、継母との子供が誕生していたら、その子供がウスディドール殿下の婚約者になった可能性は高い。
最初からそうなっていれば、ここで婚約破棄を宣言されることもなかったのだろう。
その方が良かったように思う。
しかし、結局子供が誕生することはないままお父様は病床の人となる。
わたしがウスディドール殿下と婚約したのを見届けて、お父様はこの世を去ることになったのだけれど、そうなる一年ほど前から継母はオギュレリアさんに再接近をしていたのだった。
わたしはこの動きを把握していた。
しかし、それが何を意味するかということについては、深く考えることはなかった。
子供のいない寂しさから再接近をしたものと思っていたのだ。
今思うと、この間に継母はオギュレリアさんを婚約者に擁立しようと思っていたのだろう。
かわいがっていたオギュレリアさんがウスディドール殿下の婚約者になれば、フィスラボルト公爵家での自分の立場は強いものとなる、
現当主のわたしを追放することだってできるようになる。
継母は、わたしの縁者ということで、ウスディドール殿下に謁見することが比較的自由にできるようになっていた。
わたしも継母が、わたしとは別行動でウスディドール殿下に謁見をしていたのは知っていたがのだけれど、継母の行動など本来は知りたいとも思わなかったので、ずっと放置をしていた。
しかし、この謁見は重要な意味を持っていたと思われる。
継母はこの時を利用してオギュレリアさんをウスディドール殿下に紹介した可能性が高い。
というより、紹介したのはこの時しかありえない。
そこでウスディドール殿下にオギュレリアさんが紹介されると、オギュレリアさんはウスディドール殿下を誘惑し、自分の虜にしていったのだろう。
そして、もう一人。
王妃殿下はブルリルト公爵家の出身。
この二人とは遠縁になるのだけれど、それでもそうした縁で二人は近づき、信頼を得るようになっていたという話は聞いていた。
そのような間柄なので、二人に協力するようになっていたのだろう。
婚約のことは、最終的には国王陛下と王妃殿下の了解を取らなければならない。
今は王妃殿下の発言力の方が強くなっているので、王妃殿下さえ了解すれば、国王陛下は了解せざるをえず、わたしとの婚約を破棄し、オギュレリアさんとの婚約が成立することになる。
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