無産者の創造

白川津 中々

◾️

歌手になりたいといっていた友人から、楽曲をリリースしたという連絡が入った。


「どうやったんだ」と聴くと、SNSで作曲家を探し、金を払って作ってもらったという。


「作詞は俺がしたんだ。まぁ聴いてくれよ」


言われるがままにアップロードされた曲を聴くと酷いものだった。曲はいい。作り込まれている(音は安いが)。だが歌と詞がまずい。ゲロドブのような声で冗談のようなフレーズが飛び込んでくる。どう控え目に表現しても喧嘩を売っていると捉えられるだろう言葉しか出ない。無形粗大ゴミだ。


「現代における消費文化をグローバリズム、エコノミズム、それぞれの観点から文学的に表現したんだ」


友人の解説に「なるほど」と相槌を打つものの実際にはなるほどれない。現代における消費文化もグローバリズムもエコノミズムもちっとも感じなかったし何より文学的でなかった。古典作品を読め。


「俺、デビューしちゃうからさ。そしたら奢ってやるよ」


愛想笑いしかできなかった。心の内で、こんなもの笑いの種にしかならねーよと嘲笑していた。だが、俺は彼を批判する権利もないし品評する立場でもない。黙って、顛末を見つめるだけである。


「売れなかったら俺が奢ってやるよ」


俺はそう言って友人に別れを告げた。

これから、少しばかり節約せねばなるまい。

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無産者の創造 白川津 中々 @taka1212384

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