https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093090399033430
進軍の時間になるとリューバを討伐した時のように簡単な演説をして号令を出した。一糸乱れぬとはいえないが、まとまった行軍が北の森に向かっていく。ムシュリタにより砦での待機を命じられていた俺は戦いに行く様子を見守る事しかできず高みの見物をしていた。我ながら良いご身分である。
とはいえ、俺がついて行って死んでしまったらこの世界は崩壊滅亡間違いなしなわけだから、やはり残っていた方がよかっただろう。
都合のいい言い訳にも聞こえるがこれに関していえば事実である。原始時代に衛星衝突を阻止する術はない。俺が生き残っていてもこの時点で人類が生存できる確率がどれほどのものであるか想像もできなかったが、手立てがないまま死んでいくよりははるかにましというもの。普通、まともに生きている人間は死にたがらないものだから、その点でいえば他に縋るものがない。ファンダムの人間が事実を知っていれば間違いなく俺は救世のために働かされた。なにより、俺が死にたくないと思っていたのだ。星と共に滅ぶのもそれはそれとして美学があろうが、俺はそこまで哲学的な部類ではない。なんだかんだいいながら死が差し迫れば生き延びたいのである。所詮俺は生き汚い人間だ。