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血染めの手10

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093090793219089


 何が世界の意思だ。やっている事は独裁者と同じじゃないか。自分の理想のためだけに、その他大勢を犠牲にしていいわけがないだろう。





 心の中でそう毒づく。しかしそれは自分自身にも返ってくる言葉であった。より多くを助けるために、未来に生きる人間のために、犠牲者を生み出していく。俺とシュバルツとでどこが違うのか、どこまで違うのか。本質的には同じではないかと、この時思った。





 とはいえ、ここまできて今更「諦めます」では、生きたいと思っている人間達に申し訳が立たない。ここまで肩入れした以上、世界に介入してしまった以上は、命ある者達を救わなければならないだろう。





 それこそ、盲目的な意思であり、本当に救いとなるのか疑わしかったが、何度も述べるようにもはや後戻りなどできはしなかったのだ。





 衛星が衝突する前に船を作り動物と人間を乗せて海に出る。どれだけの時間があるのか、どこまで技術力を上げられるのか、全てが未知数だが、やらなければみんな死ぬのだ。俺がやらねばなるまい。でなければ、この手を血で染めた意味がない。

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