第4話 新学期……デェス!

 カフェは落ち着いた雰囲気に包まれていた。木製のテーブルと椅子が温かみを感じさせ、壁にはモダンアートが飾られている。店内には柔らかなジャズが流れ、心地よい音楽がゆったりとした時間を演出しているようだ。

 俺は、紫に近いロングヘアーが特徴的な美女にイケボで注文を頼む。


「お姉さん、アイスコーヒーを一つお願いします」


「はい。かしこまりました」


「今度……今度、俺のシンボリズムに協力してくれませんか?」


 顔に水をかけられた。


「おい! ミウラ! お客様に何をやっているんだ!」


「そそうをしでかしそうな高校生に教育指導です」


「そそうをしているのは、お前だよ!」


「マスター、この高校生がよこしまなことを考えていました」


「おまえの読心術でお客様がいなくなるんだよ!」


 マスターと呼ばれる店主と美人な店員さんはいい争いをしている。

そこに、佐々木翔太がやってきた。


「高崎、遅刻す……ってびしょびしょじゃねぇか!?」


「水もしたたるいい男だろ?」


「……大丈夫?」


「これぞ、が」


 佐々木は俺の言葉遮るように原画のカットを出してくる。


「おまえの決め顔はこんな感じでいいか」


「なんでピエロなんだよ」


「昨日見たホラーサスペンス映画に出てきたやつと似ていると思ってさ」


「四話の時点でキャラ紹介、俺されてないんだけど。捏造するのやめてくんない?」


「安心しろ。俺もだ。」


「なら、佐々木はこれでいいだろ?」


「なんで顔モザイクなんだよ」


「昨日、警察に連行されていただろ」


「警察だけど、母さんだよ!」


 ピーポーピーポーという音に佐々木は妙に驚ている。


「ならこれでどうだ?」


「これ、少年漫画の主人公じゃねぇ?」


「風景描写を入れてないから大丈夫だ。読者のご想像にお任せしよう」


「斬新な発想だな」


「このまま教室に入れば、モテ期到来だ。それじゃ、俺も」


 二人はカフェを出て、学校へ向かう。


「あ、お客様!」


 店主に呼び止められるが、俺はフッと笑いこの場を後にした。


「新学期か……転校生きたりしてなぁ!」


「あぁ、茶髪セミロングの博多弁を使っている女の子とか」


「佐々木はそっち派か。『しよっと?』ってキュンキュンするよな」


「敦はどんなのがくると思う?」


「黒髪でマフィアの女の子」


「いるわけねぇだろ」


 新学期が始まり、教室には新たな活気が満ちていた。窓から差し込む柔らかな陽光が、教室内の机や椅子に斜めの影を落としている。壁に貼られた新しい時間割やポスターが、期待と興奮を象徴しているかのように輝いていた。

 教室の隅には、これから使われる新しい教科書やノートが積み重ねられ、独特の紙の香りが漂っていた。

黒板には、担任の平田先生が書いた「ようこそ新学期」の文字が力強く並んでおり、その下にはクラスの名前が書かれていた。


「今日から新学期ですね! 文化祭に、クリスマス合同イベント……二学期がラブコメの本番だぁ!」


「先生~ちょっと何言ってんのかわかんないっす」


「原作者が『一学期の冒頭書くのダルイとか、頭真っ白なったとか』らしいです」


「原作者の言い訳かよ。それあなたの感想ですよね?」


クラスメイトのひとりが、教室の後ろに立っている高崎と佐々木を指差して言った。


「教室に立っている人がいま~す」


「佐々木と高崎の席ねぇから」


 平田先生は冗談交じりに続けた。

高崎は不満そうに眉をひそめる。


「新学期早々、なんで俺たちだけハブられてんだよ!」


 佐々木も驚きと不満を交えながら叫んだ。


「高崎はともかく、俺もかよ!」


「転校生がくるので、二人の席に座らせます」


 平田先生は説明に対して、高崎は納得がいかない様子で反論した。


「たいてい、席はすでにあるものだろうが!」


 一方、佐々木はさらに驚き、声を上げた。


「二人!? 転校生!?」


 平田先生は冷静に促した。


「はい退場して~」


「メインシーンに主人公の俺たち差し置くなよ!」


 佐々木は不満げな叫びに、平田先生は半ば呆れた様子で返答する。


「W主人公の設定で、奇をてらった滑り芸をしたのが釈にさわったんだって」


 高崎と佐々木は納得がいかず叫んだ。


「俺たち関係ないだろ!」


「原作者に言え!」


 二人はぎゃいぎゃいと騒ぎながら、扉にしがみついて退場されまいと抗っていた。しかし、クラスメイトたちの冷静な視線にさらされ、やがて諦めるしかなかった。


「はい、早速ですが、転校生の紹介しま~す」


「「「オオオオオオ」」」


 クラスはざわめき、期待に満ちた視線が教室の前に注がれた。先生の横に立っていたのは、茶髪セミロングの女の子、スタイル抜群だ。


「こんにちは、森下美咲です。博多から来ました。よろしくお願いします!」


「「「「カワェェェェェェェェェェェェェェェェェェ」」」」


 美咲は明るい笑顔で自己紹介をした。

その時、もう一人の転校生が教室に入ってきた。黒髪で鋭い目つきを持ち、まるでマフィアのような雰囲気を漂わせる女の子だった。


「斎藤亜紀です。よろしく」


 亜紀は冷静な声で自己紹介をし、教室内に一瞬の緊張が走った。


「なんか、すごいオーラだな」


「腰になんか物騒なものもってね?」


 美咲と亜紀は、それぞれの席に向かい、クラスメートたちの視線を一身に浴びながら座った。新学期の教室には、新たな風が吹き込んだようだった。


「これは夢か? 夢叶ったぞ」


「セリフで伏線はってみるもんだな」


「二人とも早く席につけ。三分以内戻ってこなかったら、遅刻扱いするぞ。」


「「このク〇担任が!!」」


「はい、暴言頂きました。内申点下げまーす」




―――――――――――――――――――――――――――


 つづく

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アニマルヒロインから逃げています!【改】 新米田園 @mad982sousen

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