ハイクオリティSFアクション
過去の宇宙規模大災害により、宇宙と地下世界へと逃れて生きる人類
そして生命体のみならず機械までも変容させる「寄生生命体ヴァジュタス」
その両者の戦いを、人々の葛藤、荒廃と進化と共に記した力作

SFとしてかなり練り込んだ世界観や情報を、単なる設定資料として詰め込むのではなく
ディテールの精緻さを保ちつつ、情感を伴う景観描写、静謐で寂寞とした美しさすら漂う荒廃世界と共に描いています

そうしたバックボーンがあり、徐々にボルテージを上げてゆく激しい戦闘シーンも更に映えてゆく印象

SF好きなら迷わず読んで欲しいです

SFというジャンルに忠実で、荒廃感もあり、そして硬派。
仄暗い謎や伏線を感じさせるストーリー展開で、どこか懐かしい雰囲気を感じさせてくれる作品です。

それでいてSF独特の文章の畳み掛けで混乱する事も無く、素直な文体と表現で読む人を楽しませてくれると思います。
用語集で補足が入るのも好印象でした。

人類の栄華を瓦解させる厄災で人類が地上を追われ、宇宙と地下に分かれて生き延びる世界観が、すでにかっこいいです。
狂暴化した植物や昆虫をかいくぐり、生活の糧を得るサバイバル感も手に汗握ります。
なんとか確保した今の居住空間は、地上に自由にでられないという制限はありますが、機能的かつ快適で、アリの巣を模したということから「憧れの秘密基地感」がありました。

こうした世界観の小説が好きな人に、ぜひ読んでいただきたい作品です。