終わりに

 過ぎてみれば、私自身が嫌なものを無理やり変えていったり、思考誘導したりといった自分本位と思える改革を行ってきましたが案の定、多くの既得権益や町内の先輩保護者から疎まれました。

 あいつは生意気だ、皆もこれまで苦労したのだからお前らが楽するのは許せん! と思考停止万歳の言葉も多くいただきました。


 それでも、それ以上に多くの保護者から感謝されたのは言うまでもありません。


 PTA役員やPTA活動は面倒なモノ。

 だから参加するべきじゃないし組織を解体しようという機運も分からなくもありませんが、私がこれらの活動で最も重要視したのは、子どもたちのため、というPTAがそもそも持っている理念でした。

 行事で見せる子どもたちの笑顔。

 彼らの安全を守りたいという想い。

 世の不条理や暗闇や飲み会なんか知らなくていい。

 何よりも子どもたちが笑える世界を作りたかった。

 そのためには、親を暗い顔で学校に関わらせてはいけないのです。

 親子だんらんの時間を無為に奪ってはいけないのです。


 会議の数を無機質に重ねたり、飲み会の量を増やしたり、もっと言ってしまえば自分の親が不貞行為に繋がる機会などは絶対にあってはならない。

 私が関わったのべ8年の間で、役員同士の仲は良かったですが、いかがわしい関係になった人は皆無でした。当たり前の話なんですけどね。



 「暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけましょう」

 そんな言葉もありますが、そもそも灯す道具が無いからあきらめる人は多い。

 誰もがみんなそんなスキルがあるわけじゃありません。私だって無かった。

 それでも不平を唱えるよりは、暗い場所に飛び込んで、どうにかして暗くない環境を作るほうがよほど健全だと思うのです。

 だって、それに共感してくれた人はたくさんいたし、そんな人たちに支えられたからこそ長い任期を全うできたのです。


 変えたい、変わりたいと願う人は多い、誰かが旗振り役になれば、嫌なところから逃げ出すという選択肢以外の道が見つかるはずです。

 PTA活動に参加するのが嫌ならば、参加したくなる楽しい場所に変えてしまおう。ということですね。


 最後に、良く聞かれた質問にお答えして終わりにしましょう。

「そこまで時間と労力と想いを費やして、PTA活動にメリットなんかあるの?」という問い。


 確かにお金を得る訳でも無いし、仕事人として大切な時間を失ったという見方もありますが、大きく三つのメリットを感じました(個人の意見です)


 一つ目は、学校や先生方を深く知れたこと。

 先生方の苦楽を知ることもできたし、彼らがただの人間であるということに気づけました。学校内の様々な問題に触れることで、これまで一側面でしか見ることができなかった事象の真実を知ることができました。


 二つ目は、多くの保護者と知り合いになれたこと。

 同じ年代の子どもを持つ親同士の悩みを共有し解決することができました。その中には有益でない意見や、肌の合わない人もいましたが、どんな人がいるという事実を認知するだけでも、安全に同じ地域に住み続けるため誰と付き合うべきかといった切実な問題を解決できました。


 三つ目は、多くの子どもたちと触れ合えてたくさんの笑顔を見ることができました。

 何よりも、自分の子どもたちに家庭以外で、親子関係以外で接することによって、普段とは違う親の背中を見せることができたと思っています。

 PTA活動に勤しむ父親を、子どもたちが多少なりとも誇りに思ってくれたことは、他のどんな実績や称号より嬉しいもので、今でも少し自慢なんです。


 それらは全てPTA活動という場でなければ得られない成果だと思っています。

 なので、いろいろと問題の多い組織ではあるけれど、意外とPTAも悪くないと実感しております。





 終わり

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PTAも悪くない? K-enterprise @wanmoo

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