第四章 革命

 まず着手したのが諸悪の根源である、各町から二名のPTA役員を選出する制度。

 選出方法のほとんどが、希望者を募るか、声の大きい影響力のある保護者からの他薦で行われていました。

 希望者を募る場合、PTA役員というメリット(先生と仲良くなれる、不倫相手を探す、飲み会に参加できるといった既得権)だけを享受する人が何度も参加していた。

 他薦式は「誰さんがいいと思いま~す」と町内会で集団いじめのような図式があり、気の弱い人や子どもの為に我慢する方が貧乏くじを引いていた。


 この問題をPTA会長の権限で、これまで役員をやっていないリスト順で自動選出するように発令。もちろん矛先が本部役員に来ては困るので、学校長の名前を借りて「子どもたちに平等とは何か教える一環で」などという名目で書類を作成しました。


 当時の校長も事なかれ主義の極致のような人でしたが、飲み会の姿を私に記念撮影されてから、とても親身になってくれて嬉しかったです(なぜだろう不思議)


 ただ強要するだけでは反論もあるので、各町内の子ども数に応じた拠出ということで、一人だけ選出すればいいという町内を二つほど設定しました。

 これによって本部役員は二名足りなくなりますが問題ありません。そもそも書記と会計と会計監査は二名ずつ設定されていましたがそんなに仕事量はありません。会計監査などは一人で十分ですし、各行事で人が足らなくなれば有志からの参加を募ることで十分賄えました。


 ともあれ、これによって各町内から本部役員への選出が自動的になり、更にPTA役員そのものを削減することができました。


 その後は各部会で行っていた形だけの活動を見直し、パトロールや挨拶運動などは役員や部員以外の有志や、飲み会で醜態を晒した教師たちを借り出して対応です。


 ここだけの話ですが、先生ってものすごいストレスを抱えているんですよね。そうでなければ酒宴であれほどまで乱れることはないでしょうし、とても子どもたちに道徳やマナーを教える存在とは思えませんからね。ホント、大変なお仕事です。

 おかげで私のスマホにたくさんの写真が増える増える。ついうっかり受け持っている子どもたちに見せてあげたくなっちゃう。と言うとなぜだかみんな協力してくれて嬉しかったなぁ。


 それ以外の改革を箇条書きにすると


 ・専門部会の定数削減(いるだけの人が多いっすよね)

 ・学校との連携強化(先生もPTAとして参加してくださいね)

 ・飲み会の削減(子どもたちの模範になって早くお家に帰ろうね)

 ・時短会議(二時間かかっていたものを30分以内にしようね)

 ・会議を始める前に議論は終わらせておく(今はSNSで意見集約できるでしょ)

 ・チャットアプリで情報共有(言った言わないの防止、欠席者へのフォロー徹底)

 ・市P連や県P連といった外部会議は出られる人が行く。


 そして極めつけが“ベルマーク廃止”

 経験したことがある人は分かると思いますが、賽の河原で延々と石を積み上げるかのような苦行。

 丸一年、各家庭からベルマークを集め、それを切り取り線で丁寧に切り取り、点数ごとに台紙に貼り、そんな作業を何十人もの保護者が、のべ何時間もかけて行う。

 その結果「やりました5000ポイント達成です!」


 いやいやいや、アホかふざけるなよ? 時給換算してみろよ、この時間でみんなでバイトしたほうがはるかに稼げるだろうよ! とブチ切れまして、何とか任期中に廃止にできました。

 ただ不思議なことに抵抗勢力がいるのです。

「これまで苦労してやってきた人の気持ちも考えろ」「貴重な収入源なんだ」「一か所に集まって苦労した者同士の結束が深まるんです」「子どもたちが一生懸命集めているんですよ?」


 結局は、これまで脈々と続けてきた伝統を自分たちの代で終わらせることの恐怖が大きかったみたいです。ほらいるでしょ? 同じ町内に影響力を持って現行役員の行動に目を光らせている先輩パパや先輩ママが。

 ちなみにここでも飲み会の写真をチラ見した校長先生が大活躍してくれました(笑)


 かくして「時代に合わないのでベルマークは辞めます」という学校からの公式発表が成されたのです。

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