第三章 反旗
私以外のPTA役員は主婦が多く、どちらかというとあまり主張が得意でない方が揃っているという印象でした。
この小学校では五つ町内があり、各町から二名が生贄として捧げられるのですが、諸先輩パパママに押し付けられて参加した大人しい人たちだったのでしょう。
そこに加えて、事なかれ主義で笑顔を絶やさない先生方という集団の集まる会ですから、まあ何と言いますか安全に安全を重ねると言いますか、「どうしましょう、大変ですよねぇ、どうしましょう」という問題提起のみで共感ばかり表層化して、ぶっちゃけると何も決まらないことが常態化していました。
小学校の行事を時系列で挙げると、入学式、保護者総会、PTA総会、夏休みプール当番、運動会、PTA主催行事、卒業式などがあり、その合間を縫って、通学路のパトロール、挨拶運動、周辺施設の補導見回り、広報誌の作成、ベルマーク回収などやることは山積しております。
もちろんこれだけ多くのやることがあるので、PTA役員だけではなく、授業参観の補助を行う学級部や交通安全部、広報部といった下部組織があります。
PTA本部役員のみの会議、各部会との会議、学校全体の会議など、会議と言う名目の会が年間で10~20はあり、それ以外に主要イベントにはほぼ強制参加です。
そして、様々なイベントの後には、大人の楽しみが設定されています。
そう、飲み会イベントです。
普段大人しい方々も、羽目を外すというのでしょうか大変な盛り上がりを見せます。
カラオケのでかい声をなぜ会議で発揮できないのか問い詰めたい保護者。普段は鉄面皮を維持し品行方正がスーツ着てるような、生徒の母親と肩を組んでだらしない顔でデュエットする教師。
酒という、人の本性を炙り出す踏み絵のようなアイテムによって、これまで築いてきた信頼関係を台無しにする例は枚挙にいとまがありませんでした。
我々の代ではありませんでしたが、PTA役員同士の不倫関係や、教師と保護者の火遊び、シングル同士の再婚……はまだいいとして、とにかく、お前ら本当に子どもを第一に考えているのかよ! と疑いを抱く大人は非常に多かった。
べろんべろんになってゲヘゲヘ言いながら酒を飲む連中の写真は、いつか使おうと私のスマホの中に数多く残っています。
今思えば、飲み会の翌日に一番ひどい顔をした写真をグループラインで共有したあたりから何かが変わろうとしたのかもしれません(ふひひ)
とにかく、会議の多さや決まらない課題、酒で何もかも忘れようという思想など、根本的な問題を解決せずにこれまで野放しにしてきた先人に腹を立てながら、この阿呆みたいな慣習をぶち壊す思想に至りました。
一応弁解しておきますが、副会長に就任していた一年は、ものすごくソフトに波風立てずに人間関係の構築や先生との友好関係を築こうとしたんですよ?
まあ、どこを攻めればいいかという観察を行っていたことは否めませんが。
そうして私は反旗を翻したのです。
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