第3話 転売とは?
「先に言っておくけど馬鹿みたいに米を買ったりしてないでしょうね?」
最近、米が不足しているという噂で、スーパーなどで米の爆買いが起こっている。
政府は米は充分にあるのでネットのデマは間に受けないでくださいと声明を発している。
「買わないわよ」
妹はスマホ画面から目を離さずに答える。どうやらフリマアプリ・ウルcowで何かを売っているらしい。
「本当に? 米を買い占めて、ウルcowで転売してるんじゃないの?」
「私には次の流行りがわかるチート能力があるのよ。米なんてピンときてないわ」
「……でも、あんた、前科があるからね」
「ないわよ」
「昔、買い占めたでしょ? 【日野富子 米】でヒットするんだからね」
こいつは前世で米を買い占めた大悪女。
「前は前、今は今」
「……で、今は何してるの?」
「ミネラルウォーター、売ってる」
「えっ!?」
「最近、水道水のPFASがどうたらでミネラルウォーターがバカ売れ」
「でもそれってPFASの一部危険物質であって、そんなに問題ないんじゃないの?」
PFASにも色々あって、その中の一部が発がん性物質であると問題。
だから水道水が飲めないというわけではないとか。
「私、科学者ではないからそういうのは知らない」
「デマって怖いわ」
「買ってるのは在日中のお隣の国の方だよ。コメントに『汚染水が怖くて助かります』だって」
「……処理水ね」
お隣の国は日本が海に流す処理水のことを汚染水と呼んでいる。
「けど、それって海に放水でしょ? 日本人は海水を飲んでると思ってるわけ?」
「知らない。……よし。全部売れた!」
「売れたのかよ」
「他にも色々売れたよ」
そう言って妹はまるで
そんな妹を見て、私は溜め息をつく。
「なんで転売なんかが
「そりゃあ、欲しい人がいるんでしょ?」
「なんで自分の足で買いに……」
言いかけて止める。
買いに行けないのは売り切れてるからだ。
そして買い占めてるが転売ヤー。
その転売ヤー生んだのがフリマアプリ。
「どうしてフリマが流行るのか?」
「そりゃあ、承認欲求でしょ?」
「そう。承認よっ──えっ!? 承認欲求!? なんでよ?」
そういうのはSNSとかだ。
フリマとは関係ないはず。
「購入者からコメントがくるのよ。『〇〇さんのページでいつも購入させていただいております』とか『〇〇さんは欲しいもの取り揃えておりますね。すごいです』とか『センスがいいですね』などね。そういう評価が欲しくてフリマをする人もいるのよ」
「へえ」
なるほど。SNSのように他人からの評価があるということか。
「でも、あんたは違うんでしょ?」
「……ソンナコトナイヨ」
「おい、すごいカタコトやぞ」
「まあ、人それぞれよ。仕事をしたくない奴が安いものを高くで売って生計をたててるとか。潰れたショップが在庫を売るためにやってるとかさ」
「あとお金のためね」
「お金って大事」
妹は可愛い子ぶって現金なことを言う。
「金で幸せは買えないぞ」
「でも、不幸にはならないゾ!」
「ウゼエ!」
日野富子、現代転生して最恐転売ヤーになる! 赤城ハル @akagi-haru
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