第4話魔女

 この高校には、天文台がある。 


 これを有効活用しようと思えば、授業で使う以外に天文部を作って活動に使うなどが考えられる。



「なに、ここ!天文台? 話の流れからすると……ここで寝てる??」



「そ。寝袋もあるよ。3つね。天文部の唯一のメンバーとして、天文台を私用できる! 合法的に。ただ、そろそろ他のメンバーを集めないと廃部にされちゃうけどね」



「ウチ、そのメンバーに誘われてる?☆」 


 ジト目で俺を睨むコトノハさん。ギャルメイクも相まって、目力が強い!なんか、可愛くもあるけど。


「話が早くて助かる」



「結界も張ってあるね。昼休みや放課後に睡眠がとれるのはありがたいかも。ウチら、学業の他に夜職よるしょくもあるからね☆」



「夜職、言うな💦」


 確かに、俺達、夜中に働いてるけどね。給料ももらってる。。特別会計ってやつ。



「天文部って、どんな活動してるの?」



「月1で学校に泊まって、天体観測。年に3度の合宿もして、天体写真を撮ったり。文化祭では研究発表もするね。あと、陰陽師としても天体観測は重要な仕事の一つだ」



「星占いとか?」


「そうそう。昔は、暦とかも作ってたし」


「楽しそう。陰陽師は、自分のこと占えないし」


「自分の利益のために術を使えないって、謎だよね。で、天文部入ってくれる?アリバイ作りのためにも必要なんだけど」



「アリバイ作り?」



「ウチのクラス、昼休みは毎日、お祭り状態」


「お祭り?」


「漢字的には、こう書くんだけどね」

 

 俺は、スマホのメモ帳をだして漢字を入力した。


 “お祀り”と。


「神様をまつってるってこと?」  


 京都3大祭りの一つ“祇園祭り”みたいなもの。あれも、疫病神を“お・も・て・な・し”して、穏便に帰っていただこうという厄除け祈願の儀式なのだ。これが、みやびな京都人のマインドやで!



「そ。相手は、おそらく何百年も縛られてた土地神様だ。その怨念と……多分憑かれている女の子の自身にも問題があって……最凶の組み合わせでね。中学の時は別の学校だったから俺は関与してないけど、中3の時の彼女のクラスメイトは、不審火、事故、自殺、原因不明の精神病、行方不明などで過半数が現在、高校に通えていない。軍事用語を用いれば……“壊滅状態”だな! 彼女は、俺達の間では疫病神に憑かれた魔女“邪視”と呼ばれているよ」


「“邪視”」


「で、昼休みは毎日お祀りというか大お遊戯大会が開かれてる。ま、余興ってところだけどね。本番は、夜中に行われる罰ゲーム大会。それに関与するアリバイとして天文部の活動を使うって感じかな?」


「なるほど。入部届け、下さい☆」


「はい、コレ」  


 それから、俺達は寝袋を天文台の大望遠鏡を境に両端に敷いて、寝袋に入った。 

 

 陰陽師が2人揃うと、お互いに安眠のおまじないを掛け合うという芸当ができるようになる。陰陽師は、何故か自分のために術を使えないという縛りがあるからだ。 

   

 初めての共同作業。


 そうして、40分ほど普段よりぐっすり熟睡する2人なのだった。

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お祀り ライデン @Raidenasasin

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