第7話:ヤニカス、舌戦を制する。

あれから1日空いた今日、伝説伐のギルドハウスに呼ばれた俺は、不機嫌を隠しきれずにいた。


「呼んだのは他でもない、君が獲得したカナエールの素材を買い取りたい」

「徴収したい、の間違いだろ」


伝説伐は大手ギルドからの援助を受けたギルドだ。簡単に言えば子会社、もしくは下請けと例えればいい。そのお偉いさんが俺のカバンにご執心だそうだ。


「無理にとは言わない、この世界で生きる方法は無限にあるからな。よく考えて決めてくれ」

「あぁそうだろうな、あんたが言う通り考える必要も無い。ここで売らなかった場合俺に対する街の態度は一変するだろう。

あんたらが統括している商人や鍛冶師なんかには異常な額を吹っかけられるだろうし、その場で出禁、なんてことになってもおかしく無い。それだけの素材には価値があるからな」


はらはらとツワブキが見守る中、俺は煙草をギルド長室の机に直に押し付けた。


「なっ!」

「ツワブキさん、こうなった時点であんたとの関係も切れてるんだよ。まさかあの安い剣一つで恩を全て返したと思ってるのか? 俺にとっては上の武器だが、自分でも言ってたよな? ギルド倉庫に眠っていた数打ちの品だって。それに、俺が獲得した素材の情報を流したのはあんただろ?」

「すまない、しかし!」

「それ以上言わなくてもいい、あのときこいつらを呼んできてくれたことには感謝しているからな。おおよそラインを切るとでも言われたんだろ。長い付き合いのこいつとぽっと出の俺、どちらを優先するかは一目瞭然だがな、俺だってそうする」


イライラしているのはそこでは無い。


「よくもまあ取り逃してくれたな、あの惰竜を。お前らは伝説を殺すために準備してきたんじゃ無いのか?」

「あそこまでとは思っていなかった。それに、我々も最高のコンディションでは無かったからな」

「数人欠けた程度で潰れるようなギルドなら、あんたらは終わってるよ。目標を高く持つことは大切だが、はニュアンスが違う。果たしてあんたらはどっちだった?」


言い過ぎ? いや、元はと言えばこいつらがあの惰竜を墜とせていればいくらでも手に入った素材だ。


会社で例えるならば、自分が作っていたコンペの雲行きが怪しくなってきたから新人の案を奪ってリフォージしようとしているのと同じだな。


「結論、お前らにとっては俺が手に入れた素材は無かったものだ。お前らが心配しているのは、俺がどこかしらのギルドに参加することだろうが……お前らのおかげでそういうことは一生無いだろうな」


両者睨み合う状態が続く。そこで俺は更なるカードを切ることにした。


「そんなに欲しいのなら、自分で狩りに行けばいいんじゃないか?」

「マップモンスターは居場所がわからない、この世界の常識のはずだが」

「ああ、そうだった。俺が現れるまでは、な」




「俺はカナエールの居場所を正確に把握できる」


『星屑竜の玩具』という称号のせいだ。


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『星屑竜の玩具』


あなたは生涯をかけてカナエールの娯楽となり続ける運命に選ばれた。


効果:聖魔法の獲得、VIT×2倍のボーナス、『星屑竜カナエール』の居場所をマップに表示。

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「その上で俺をどう扱うかを決めるんだな」


時間の無駄だと退出をする。


「まっ!」


制止する声を無視してログアウト、そこは会社の休憩室だった。


「……平日の昼に予定を立てる時点で終わってるんだよ」


はぁ、やれやれ。


「課長、お疲れ様です」

「お疲れ様、目処が立ったら休憩入っていいぞ」

「あざっす!」


この部署に勤めている若者はみんな良い子だ。


「課長、煙草辞めてから一層男前になりましたねぇ」

「褒めても飲み代しか出さないぞ」

「良いっすね、今度飲みにでも行きましょうか!」

「行けるやつリストアップしといてくれ。4人くらいならなんとかなる」


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ちなみに、当初のものではもっとトゲトゲ言葉を使ってました。


【近況ノート:当初のセリフ】

https://kakuyomu.jp/users/821410/news/16818093087725917914

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