第11話:ヤニカス、装備を新調する。

「はぁ、それで? ウチの気を引きたくて仕方な―――く嘘をついたと」

「うえぇ、ぐずッ! ごめんなざいぃぃいぃいぃぃぃ!!」

「許してあげなよ。別に人に迷惑かけてるわけじゃないんだしさぁ」

「現在進行系でヤニ子が被害被ってるじゃないか!」

「いやいや、あてが外れただけで他にも達人級はいるんだろ?」


そこで、みゃーこが口を開く。


「……………ヤニちゃん。達人級っていうのはね、相当やり込まないとなれないの。だから人口が少なくて、大体は大手ギルドに抱え込まれちゃうの」

「ヤニ子は既にウチら……………いや、元々ウチらが所属していた伝説跋とラインが繋がっていると思われてる。上位ランカーほどケチだからね、相当なメリットがないと貸してくれないよ」

「難しいな……」


そこで、タングスさんが話を広げる。


「ジャラシが達人級ってのはあながち間違いじゃねぇ、ただ試練を乗り越えられてねぇんだ」

「試練?」

達人級鍛冶師マスタースミスが鍛冶台に使うメル鉱石、そいつを自分の手で取ってきて初めて、達人級を名乗れるのさ」


……………つまりだ。


「その鉱石を採集するための場所を教えてくれ」

「おいおい、ヤニ子まさか」

「タングスさんは、と言った。その場所まで俺達がキャリーすればいい」

「理にかなってますね!!」


すかさずハナリィが賛同する。


「それでも別にルール違反じゃねぇが、今から行く洞窟のレベルアベレージ50だぞ? 若干忘れかけてたが、ヤニ子は始めたばかりじゃねぇか」

「余っているステータスポイントを防御面に全ツッパすればなんとかなるだろ。それでも40レベル台だけど……………」

「そ、その分は私が作る装備でカバーできますぅ!!」

「ジャラシくん!?」


やる気のジャラシに、ハナリィが驚きの声を上げる。


「戦うの苦手なんでしょ? せっかくアイラさんと始めたのに、役に立ちたいから鍛冶になるって……………」

「わ、私だって弱いわけじゃないので!」

「よし、決まりだな。出発は俺の装備が完成してから!」




えいえい、おー!!






◇◇◇◇◇






「こ、ここが私―――というより、師匠の工房です!」

「「おぉ〜!」」


俺とみゃーこが歓声を上げる。ザ・中世のような雰囲気でテンションが上がってしまったのだ。


「は、話を聞いたところ、とにかく重たい盾が二枚欲しいと?」

「あぁ、下の方を研いで、鋭さも上げてくれると助かる。そこまでできるのかは知らないが……………」

「か、可能ですよ!」


そう言い切った彼は、壁にかけられた盾を、一枚ずつ何枚か取り外し俺に差し出す。


「これなんかいかがでしょうか! 『重厚な騎士の盾』!!」


……………結構重たいな。これを二枚振り回すのかぁ。


「レベリングが必要だなぁ」

「いくらでも付き合うからね、ヤニちゃん!!」

「ありがとう。あとは装備だけど……比較的軽めのやつがいいかな?」

「……………見た目はどうなさいますか?」

「こだわりは特にないから、良さげなやつ!」

「おいおいヤニ子。ジャラシヲタクそれは禁句だよ」

「へ?」




「―――――何でも?」




……………ジャラシ君の目の色が変わったような。


「ならこちらはどうでしょうか! 『騎士用祭事鎧(S)F』!! 今のヤニ子さんの見た目にまさにジャストマッチ!! ベストを超えてジャストですよ、あぁ今のは韻を踏んだわけではないのですがうまいことを言ったみたいになってしまいましたね!」


「なにこれ」

「これが、ヲタク魂だよ」


「話を戻しましょう、そもそもことの発端は私が見たアニメに影響された――――」

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ヤニカス、禁煙するためVRMMOを始める。 涙目とも @821410

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