第8話:ヤニカス、双盾を試す。
あの後、幾度も話し合いを続け、ほぼ俺主体の結論となった。
一つ目、俺のパーティが伝説の集い(こいつらのギルド名)の運営するサービスを割安で受けれるようにすること。
二つ目、『星屑竜の
三つ目、鱗の装備化には最大限の協力をすること。
四つ目、作戦決行当日、可能な限り俺が協力すること。
「と、いう結果になった」
「ヤニちゃん……さすがに甘くない?」
「俺からすればかなりぶんどれたほうだと思っている。そもそもの話、あいつらが来なければ獲得できなかった素材だからな」
「でも納得いかないです!」
「ヤニ子が決めたんだろ? ならこっちも文句ないさ」
「……………なんでハナリィちゃんとアイラさんがいる?」
お前たちは向こう側だろ、と視線で問う。
「あぁ、それは簡単な話だ」
「私たち、伝説伐を抜けましたから」
「えぇ!? そんな簡単に抜けて良いのか?」
その戸惑いにアイラさんが豪快に笑った後、
「元々はあのボンクラの付き合いで入っていたギルドだ。まさかあそこまでとは思ってなかったが……付き合いを辞めるわけじゃあないからな、後ろからぐじぐじ言う方が性に合ってる」
「疑いをかけられた身ですからね、いづらいとは前々から思ってました」
「そうか……」
「良いんじゃない? 二人が決めたなら」
「アタシらはヤニ子に協力するよ。で? これからどうするんだい?」
「助かる。当分はこいつを加工できる腕の良い鍛治師を探す、レベリングも並行して行う。そして新スキルの検証もしなければいけない」
「ほう、これが……」
「星屑竜の護鱗ですか、とても綺麗です」
まさに純白に、鈍り無く輝く巨大な鱗。
全てをかなぐり捨てても欲しい、という人間の強欲にダイレクトに働きかける吸い込まれそうな光に、ライラさんは頭を叩き、ハナリィちゃんは首を振ることで抗う。
「加工する人に心当たりはないか?」
伝説の集いが最高峰の職人と言った奴でも、まだ心許ないと感じたし、ぶっちゃけ信用できない。
「ならいい伝がある。ここから南西、山岳地帯にある『ドワーフの街:インコネル』に、腕の良い鍛治師がいる。まぁ、アタシらの元仲間なんだけどな? そこの鍛治世界で一番の鍛治師に弟子入りしてんだよ。人見知りだが、先週マスタリーの称号を取ったって言ってた」
「決まりだな」
「だね」
「はい!」
正面に向かい合って宣言する。
「俺たちはドワーフの街に向かう!」
◇◇◇◇◇
「さて、『双盾』を試さないとな」
両腕に大型盾を装備し、軽く振る。
どうやらこの世界は戦闘をした経験から経験値を得るらしく、この前の惰竜との戦いで10もレベルが上がっていた。その分を全てVITとSTRにつぎ込んだので、重たい金属製の盾でも2枚持てている。
……徒手格闘に近い感じだろうか。しかしそれでは盾を二つ持つ理由がないような……
「もしかして完全防衛職なのか……?」
「そんなことある? ヤニちゃんはカナエールに対して盾で殴ってたんでしょ、そん時はどうしてたの?」
「盾の尻をこう、突き立ててた」
「それで良いんじゃないの?」
「いまいち力が入らんのだ……」
飛び出してきたウサギを『
「じゃあどうだい、盾にたくさんナイフの先端を付けるってのは」
「カッコいいですね、それ!!」
「攻撃を受けたらすぐへたりそうだなぁそれ」
盾である意味がないと言うか……あ、鹿だ。
逆手ナイフの要領で振り抜き、下部の尖った所を首に突き刺し絶命させる。
「
左の盾を振り抜き猪の頭に当てると、すかさず右の盾で突進し追撃する。
「今ので削り切れないのか」
「火力不足だね……あ、そうだ」
魔法職であるライラさんが風魔法であっさりと仕留めると、「盾、貸して」と言ってきた。
「いいが、どうするんだ?」
「こうする」
盾には腕を固定するための輪っかが二つついているのだが、そのうちの一つ、腕に巻く方を下向きに斜めにして、その下にちょうど
「これで持ち替えれば、刺突がしやすくなるんじゃないかい?」
「目から鱗だよ、ありがとう!」
もう片方も同じように……と。
ちょうど先ほどと同じ種類の猪が来たので試してみる。
まずは突進を受ける、ここまでは一緒だ。怯んだ所を殴りつけ、そして……………!!
「
咄嗟に頭に浮かんだ名前を叫びながら喉笛にぶっ刺す。猪は一瞬身を固めたかと思うと、吹っ飛ぶように仰け反り粒子へと姿を変えた。
「やったじゃんヤニちゃん!」
「Con」
「おめでとうございます!」
ふぅ、なんとかここでやっていけそうだな。
「飯にするか!」
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