第9話:ヤニカス、美食家気取り。

「なはは! 面白いなこれ!」


ただ、盾をぶん回しているだけで敵が倒れていく。本来身を守るためだけの重さを攻撃に転じているのだ、これくらいの破壊力くらい、有していてしかるべきだろう。


盾刀シールドチョッパーッ!!」


手刀の要領で、首脇から反対の腰に目掛けて袈裟斬りにする。切れ味が足りないが、それは得意の重量でカバーだ!


盾杭シールドパイル!!」


アッパーカットのイメージで、突き上げるような軌道を描き的確に心臓を抉る。


「なはははは!」


殴る、殴る、殴る!!


「……どうしよう、ヤニちゃんが戦闘狂バトルジャンキーになっちゃった……」

「よくある話だろう、自分のやりたかったイメージが寸分類なく出来る時の快感といやぁ、煙草に勝る……煙草吸ったこと無いけどね」

「私も負けてらんない!」


盗賊であるハナリィちゃんが参戦に参加する。そこで俺は盾を斜に構え、猪の首を上に逸らす。


そこを的確に突き、ナイフで頸動脈を切って動きを鈍らせてくれた所をヤクザキック(今もこの言い方をするのだろうか?)。軽く仰け反った隙にしっかり仕留めてくれた。


「ナイスだ」

「ヤニさんのリードが上手いんですよ!」

「私も私も!」


なら、俺もやりたいことやるかな。


今までなら猪の突進はずらすことしかできなかったりでも、今なら……!


「ふん!」


姿勢をうんと低く、2枚の盾を上下に構え受ける!! ゴリゴリゴリと、靴が地面を抉る音が鳴るが……!!


「耐え切ったぞ!」


伊達にSTRにガン振りしていないからな!


「ナァイス! 斬撃スラッシュ!!」


線画でトドメを刺し、ハイタッチ。


「そろそろ休憩しよう」

「「はーい」」

「あい」


突き出した地面越しに見る池のほとり……


「あ!」


このロケーションは!


思い立ったが吉日、それ以外は凶日! 直様バッグからボトルを取り出す。


「シュバっ!」


瓶の底を切れ……きれ……切れない! いいやもうナイフ使ったれ!


———シュリン!


重力に従って中身の液体……度数40度のブランデーが口に流れ込んでくる。


うーん、濃いアルコールの匂いと濃縮された酒の味にオロロロロロロ……


「ぶひゃー! アルコール強ぉ!」

「ヤニちゃん何やってんのぉ!?」

「だ、大丈夫……」


そしてすかさず煙草を……指パッチンに見せかけた炎魔法で付ける!


「ふぅ……………満足」

「よかったね、アタシは知ってたけど、今時の若者はバトル美食家知らないよ」

「まじで!?」

「何十年前の漫画だと思ってるんだい?」

「まじかぁ……そっかぁ……」


ジェネレーションギャップぅ………………


「一応言っておくけど、アタシは社会人数年だからね」

「いつかお前もこうなるんだぞ、先輩は大切にしろよ……」

「切ろうにも切り切れないくらいの恩がある先輩がいるよ。今度飲みに行った時アタシが出すつもりだよ」

「そこは先輩に出させてくれぇ……」


「社会人って大変なんだね」

「一生子供でいたい……」


その数時間後、無事にドワーフの街に着きましたとさ、ちゃんちゃん。

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