残香

翡翠

私の話を聞いてください



-♪



さあ、今週も始まりました!⬛︎⬛︎トーキョーからお送りする⬛︎⬛︎ラジオ!



先週、お伝えしました、今回のラジオのお便りテーマは「人生で経験した身の毛もよだつ怖い出来事」です。



皆さんからいただいたお便りをご紹介しましょう!最初のお便りは東京都在住「キサキ」さんからです。ありがとうございます!




♢♢♢




私たちが、その部屋に初めて足を踏み入れたのは、梅雨前の五月の終わり頃でした。


友人の⬜︎⬜︎が「心霊スポット巡りに行こう」と軽い調子で提案したのが発端です。


私自身、霊現象を信じていませんが、正直怖くてとてもじゃないけど、行きたくありませんでした。


でも物好きの友人に引きずられる形で、私は後日、その心霊スポットに行くことになってしまったのです。


その場所は都内のあるアパートの一室。


数年前にある女性が自ら命を絶ったという噂があったらしいのですが、詳細は不明。住む人々が次々と奇妙な体験をし、次第にその部屋は空き室となったらしいのです。


そして、今日に至るまで誰も住むことのない、いわばいわく付きの部屋でした。


アパートの外観はごく一般的で、老朽化はしていましたが、異様な雰囲気を感じさせるものはなく、周囲には住宅が立ち並び、可愛い猫ちゃんがうろついていました。


友人は少し興奮気味で、手に持ったカメラをいじりながら私に声をかけました。



「こういう場所って、映像に何か写ることが多いらしいぜ。ほら、映画とかでよくあるじゃん」


映っても困るけどねと私は呆れながら返しました。


玄関のドアはかすかに錆び付いていて、重々しく音を立てて開き、中に入ると、部屋は薄暗く、時間が止まったように静かでした。壁や床の痛みを見ると経年劣化がうかがえます。



「なんか、思ってたより普通じゃない?」



とカメラを回しながら私に顔を向けました。


彼の言う通り、特段異様な点は本当になかったんです。ただ私は何か引っかかるものを感じて、空気の重さというか、のしかかってくる様な、説明のつかない圧迫感が胸の奥にドンと来る様なそんな感覚でした。



「ここだよ例の場所」



友人が奥の部屋の扉を指さしました。


そこは、女性が命を絶ったという寝室らしいのです。


その扉を開けた瞬間、不快な寒気を感じました。流石の友人も一瞬動きを止め、なんか…寒いなと腕を摩りながら呟いていました。


部屋の中には、ベッド、ドレッサー、クローゼットなどの家具が残されていて、女性が生活していた痕跡がそのままなのです。


私は、圧迫感で空気が吸えなくなり窓の方に目を向けました。でも、おかしいんです。




窓ガラスに、明らかに人の手の跡がありました。外側からではなく、内側からです。


私は友人の顔を見ながら窓を指差しました。彼はカメラを持ったまま、黙ってその跡を撮影していました。


その時、友人のカメラが突然、異様な音を立てて止まったのです。


彼は顔をしかめてカメラを何度も叩きました。壊れたのか?と少し苛立っているように見えました。


それから程なくして、部屋の隅から微かな音が聞こえたんです。


何かがこすれる音っぽい、何かが床を引きずるみたいな、ズーッという不自然な、変な音でした。



聞こえたか?と友人が私に向かって尋ねてきました。


その音に気づかない筈がありません。


二人で音のする方向をただひたすら見つめました。クローゼットからでした。あれほど静かだった部屋の中が音によって突如として空気がガラリと変わったんです。


圧迫感はますます強まって、私は足を動かすことさえ躊躇するほどの恐怖を感じました。


友人がクローゼットの扉を開けようとして、私がやめなよと言おうとした時、扉が軋みながら開きました。


何も無かったです。ただ、暗闇が広がっているだけでした。



「なんだよ…何もないじゃん」



友人はケタケタと笑いながら言ってましたが、肩が小刻みに震えていました。怖かったんでしょう。


私もそれを感じていましたし、何かがいる。この空間には、言葉にできない「何か」が確実に存在していると感じました。


結局、私たちはこれと言ったものは見つけられず、部屋を後にしました。


それで終わったなら良かったんですが、数日後、友人からの連絡が急に途絶えました。彼に電話をかけても全く繋がらず、メッセージにも返事がないんです。


最後に会ったあの日、彼はいつもの調子で、バイバイと笑いながら別れたはずだったんです。しかし、その日以降、誰も彼の姿を見ていないのです。



とても気味が悪くなりました。原因はあのアパートなのかもしれないと思い、私は再び足を運ぶことにしました。



部屋は一見、あの時と同じ様に見えました。ただ一つだけ、違うものがありました。


クローゼットの中に、友人が持っていたカメラが残されていたのです。


カメラの電源を入れると、彼が最後に撮影した映像が映し出されていました。

その映像には、私たちが見ていたモノとは違うモノが写っていたんです。


映像の中の部屋は凄く暗くて影がユラユラ揺れていました。


カメラの揺れが急に止まってクローゼットの中が映し出された瞬間、画面には「彼女」が居ました。



彼女です。



青白い顔をした女性が、じっとカメラを見つめているのです。その目は、まるで私たちを追い詰めるかのような顔でした。


そして、彼女の手がゆっくりと画面に近づいて… その映像は、そこで途切れました。


私はとても怖かったんです。友人が消えた理由を理解してしまいました。彼はあの部屋に、まだいるのかもしれない。


そして、私はその真実を知ってしまったんです。逃れられない恐怖が私を襲ってきました。


私はその場をすぐ後にしました。


それ以来、私は夜になるとあの映像を思い出すんです。クローゼットの中で待ち続ける彼女の姿を。


そして、次は自分が消える番なのではないかと怖いのです。


彼女の手は、まだこちらに向けて伸ばしているのではないかと。




p.s.この友人が最後に撮った映像を後日、◯◯日に日付指定でそちらのラジオに送らせて貰います。何か分かったことがあれば、私にメール頂けますと幸いです。






♢♢♢





との事でした〜、キサキさんお便り有難うございます。うわ〜、とっても怖い。


で、その映像は今あります?昨日届いてますよね?


届いてない?◯◯日指定ですよね?


あ、そうですか〜。


ではこの件の続報がありましたらまたコーナーでお知らせ致しますね!



-♪




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