確かにそこにある不穏さ。それをエンタメとして消費する明るさ。現実でも私達は何かとんでもないことを見落としているのにも関わらず、「おもしろかったね!じゃあバイバーイ!」と流してしまっているのでは……?彼女がどうなってしまったのか。これからあの部屋は、そこに関わる人は、どうなってしまうのか。色々と想像できる余地があるのも良かったです。
ホラーの後味の悪さは結局それがなぜ語られているんだ。という視座の据え方にあると感じることが多い。そういう意味でうまい具合に話を閉じ込めている。大変よろしいと思います。
怪談、あるいはホラーがストーリーとして語られるとき、問題になることの一つが"語り手"の立ち位置であると思います。すなわち、一人称かつ最後に襲われたところで終わっていると、じゃあ誰がこの話を他の人に伝えたんだよ、となってしまうアレです。この作品は、趣向を凝らした物語の形式によってその課題を見事にクリアし、それによって一人称の語りで書けるストーリーの枠もあっさりと踏み越えているところが大変魅力的だと感じました。楽しませていただきありがとうございましたm(_ _)m