第41話 高級ネコ缶……それは一度口にすると、もう二度と普通のネコ缶に戻ることができないと言われている幻のネコ缶……

「≪アルミちゃん≫、大変世話になったな」


 ≪レーモンド≫さんが頭を下げてくる。


「良いんですよー。こっちはお金をもらって情報提供しただけですし、お互いに得しただけってことでー」


「旦那様に良い報告ができるのでとても感謝しています。もしかしたら、話の流れ次第では、旦那様と直接お会いいただくこともあるかもしれませんが、その際には『猫の眼』ギルドのほうに直接依頼をしてもよろしいでしょうか?」


 ≪ガーノルド≫さんも≪レーモンド≫さんに習うようにして慌てて頭を下げてきた。


 なるほどねー。

 まあそっか。そういうこともあるよね。


「わたしは別にかまわないですよ。話をするだけならいくらでもー。あ、ちゃんとクエスト発注でお願いしますね。手間賃はほしいので♡」


 でもなー、研究内容を世の中に発表したかったら、追加で1000万[SEED]っていう契約にしているけれど、さすがにそれはないよね。ゼリンの習性にそこまでお金を払ってまで発表する価値があるとは思えないし。


「ゼリンたちが食事を終えて帰っていく……。彼らはどこから来て、どこに帰って行くのだろうか」


 ≪レーモンド≫さんが、誰に言うでもなく独り言のように呟いた。


 ホントどこから来たんだろ。

 街のすぐ外に、こんなに大量のゼリンが発生したのなんて聞いたことないですよね。不思議だなあ。


「あ、すごい。ゼリンたちがいなくなった後の地面……庭の草が全部食べ尽くされてる……。草むしりしなくて大丈夫になった!」


 普通のゼリンが多かったはずだけど、癒草ヒーリング・グラスだけじゃなくて、毒草ポイズン・グラスも、それ以外の雑草類もあらかた食べ尽くされているね。大移動してきてお腹が減って、何でも良いから食べちゃったってことなのかな。まだまだ知らないことがいっぱいだー。


「それでは我々はこれで失礼させていただくよ」


「ありがとうございました。≪アルミちゃん≫さん、またお会いできる日を楽しみにしています」


 そう言って、≪レーモンド≫さんと≪ガーノルド≫さんは街とは反対側のほうへと去っていった。

 あっちにお屋敷があるのかな。


 いやー、それにしてもホントに20万[SEED]ごちそうさまです♡

 今日は打ち上げパーティーできるねー♪


【高級ネコ缶をお願いします】


 はいはい、高級ネコ缶ね。

 1個50000[SEED]かあ……。

 ホント今回だけだよ? さすがに高すぎるし……。食べたらレベルが100くらい一気に上がらないと割に合わない値段だよ……。


【高級ネコ缶……それは一度口にすると、もう二度と普通のネコ缶に戻ることができないと言われている幻のネコ缶……。とうとう口にすることができるんですね】


 ちょっと待って?

 買うのは1個だけだよ? ほかは貯金しておかないと、何か装備を買ったりとか、今後もいろいろお金が入り用になることもあるだろうし。

 

【もちろんです。1個だけで十分です】


 うん……。でもすごく気になるのが、「一度口にすると、もう二度と普通のネコ缶に戻ることができない」ってところなんだけど……。高級ネコ缶が買えるのは、ホントに1個だけだからね? 次の食事からは普通のネコ缶しかダメだよ?


【体が受け付けなくなって、衰弱死してしまうかもしれませんね……】


 いや、そんな目で見るのはやめて?

 同情を引こうとしても買えないものは買えないよ?


【今すぐ視聴者数を100倍にして、ギフトをたくさん贈ってもらえるようにしてください。そうすれば毎日高級ネコ缶が食べられます】


 わーお! 自己チュー発言がすごいね!

 もはや、わたし1ミリも関係ないじゃん!

 自分で視聴者の人にお願いしなよ?


【≪アルミちゃん≫は薄情です。これはネコに対する虐待行為ではないでしょうか】


 絶対違うと思う……。

 レベル1の冒険者に、1泊20[SEED]のギルドハウスに泊まっているわたしに対して、1食50000[SEED]の高級ネコ缶を強請る≪サポちゃん≫のほうが、何らかの犯罪行為を犯しているのでは?


【……仕方ありませんね。これも高級ネコ缶のためです。特別なクエストを発生させようと思います】


 特別なクエスト?

 めっちゃ儲かるやつ?


【それは受注後のお楽しみです。今日はこれですべての依頼も完了しましたし、ギルドに戻ってクエスト完了報告をしましょう】


 はーい。

 あ、その前に≪サンドラ≫さんに庭の草むしり完了の報告をしないとね。

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